2013年07月20日

敬老バブル


山下努『「老人優先経済」で日本が破綻』を読む。

本書の狙いを,著者は,こう書く。

世帯主が60歳以上の高齢者世帯の消費支出額は100兆円を超え,SNAベース(国民経済計算)で家計最終消費出学の44%を占めます。企業も顧客である高齢者の方を向き,政治も消費も高齢者が決定権を握ります。若者の消費パワーは高齢世代にかなうはずがありません。なぜなら,高齢者に仕送りする税金や社会保障費を差し引かれた中で,家を建て子づくりすることを強いられているからです。しかし,こうした現実にもかかわらず,アベクロミクス(アベノミクスは安倍・黒田両氏の功罪とみなし,この本ではあえてこう呼びます。著者の造語)のように若者は年長者から見えない「目隠し」をされており,本当の現実はわかりません。その目隠しを取り,「老人優先経済」の実態を暴くのが,私の最大の任務です。

冒頭こう書く。

「早く65歳になりたい」という若者の気持ちがわかりますか?…これにはショックを受けました。確かに65歳になれば,年金という永久所得が死ぬまで手に入れられるかもしれません。でも,若者が老人になりたいなんていう国に未来はあるのでしょうか。

しかしまず,現在40歳以下の年金支給開始年齢は,いずれ70歳まで伸ばされる。著者は,65歳以上だけが,かろうじて勝ち抜けできるという。

60歳以上は,年収600万,2000万円近い純貯蓄。30代は,600万以下の収入で,259万円の負債超過。国民が保有している金融資産は,1400兆円から1500兆円,その70%をシルバー世代が握っている。

しかし年間53兆円が支給される公的年金も,現役世代が納めた保険料だけでは足らず,10兆円規模の税金を投入し,高齢者が大半を使う国民医療費は40%を超える。多くの健保は高齢者への支援負担で赤字。現役世代の健康を守る保険制度は,重篤な状態になっている。

一方で,国民年金の納付率は58.6%,5人に1人は保険料を払っていない。世代別では,20代後半が46%。30代前半でも49%。1990年代半ばまでは,80%を超えていた納付率が,20年でここまで下がっている。月額15000円の保険料が重すぎるのである。

国民年金の加入者の平均年収は159万円で,国民年金の受給者の平均年収は189万円。…貧乏な若者が,自分より豊かな祖父母に仕送りをしているようなものです。

実はこうした年金の「ニッポン化」は,世界的な流れになっている。

米国は高齢化率(65歳以上の人口比率)が13%で,日本より10%強も低いわけですが,そんな米国でさえ3人の現役世代が1人の高齢者を支えているというのが現状です。これが2030年ごろには,2人で1人を支える状況になります。
一方米国の確定給付年金の加入者数は4200万人で,人数自体は1990年代と変わらないものの,現役の加入者数となると1800万人に減少しており,…これはすでに,現役1人で1人以上のお年寄りを支える構図となっています。

現在世界中で,マネタイゼーション(政府の財政赤字を中央銀行が引き受けること)が進んでいる。

現役世代が減少して,税収が落ちるにもかかわらず,社会保障費は膨張します。これに対し,本来は増税し,政府のサービスを減らすことで対応すべきですが,「不利益」を配分すると,政治家は次の選挙で落選してしまいます。そこで,国債を大量発行し,将来世代にツケをとばしてしまおうというのです。

日本の中央政府部門の公的債務は1000兆円を超えます。自治体などと,旧特殊法人など準政府部門の債務を加えれば,1200兆円規模となるでしょう。

公共事業に今後10年で200兆円を使うという国土強靭化政策を掲げたままだから,それはまたは将来世代へのツケとして先送りされることになる。さらに,このままなら,毎年40兆円近くが国債で賄われる。つまり借金だ。

著者は2005年時点で計算した世代別・生涯所得と生涯純負担率を,紹介している

0歳 2億1048万円(負担9417万円,受益5906万円) 差引3510万円の負担超(生涯純負担)生涯純負担率16.7%

20歳 2億2506万 差引2229万円の負担超(生涯純負担)生涯純負担率9.9%

60歳 3億2887万円 差引2282万円の負担超(生涯純負担)生涯純負担率7.5%

85歳 3億436万円 差引1477万円の受益超(生涯純利益)生涯純負担率マイナス4.5%

著者は言う。

その時代に受益を享受する世代が,必要な資金を自分たちの生きる範囲内で賄う自己責任原則が鉄則となる時代が来て当然でしょう。

そのためには,国債を60年もかけて償還することをやめる,

という。賛成である。後の世代に先送りする限度はすでに来ている。



参考文献;
山下努『「老人優先経済」で日本が破綻』(ブックマン社)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm




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posted by Toshi at 05:33
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