2015年01月22日

くわばら


くわばらくわばら,

なんて言い草は,死語か。しかし,こういう表現にも歴史がある。もちろん,

桑を植えた広い畑。桑田

という意味もあるが,

落雷を防ぐために唱えるまじない。
嫌なことや災難を避けようとして唱えるまじない。

といった,呪文のように唱える,というのがある。そのわけは,

地名や人名伝説に由来する

という。

ひとつには,菅原道真の領地「桑原」にあるらしい。都には落雷が多かったが,この地だけは,被害がなかった。で,落雷除けのマジナイに使った,というのである。

ふたつには,大阪和泉軍の桑原の井戸に落雷後,すぐに蓋をして雷を出られなくしたので,雷神が「自分は桑の木が嫌いなので,桑原と唱えたなら二度と落ちない」と誓った,という伝説によるともいう。この説には,異説もある。和泉の西福寺には雷井戸と呼ばれる井戸があるらしい。このお寺には奈良時代に道行と言う修行僧がいて,雷に遭遇したとき,慌てずに大般若経を浄写したところ雷がピタリとやんだという伝説があり,それ以来ここにある井戸には雷を封じ込める力があると言われるようになった。「くわばら くわばら」と唱えることで「ここは雷を封じ込めた雷井戸のあるクワバラですよ」と雷に教えると言うことになった,というもっと詳しい説明がついたものもある。

三つには,説話的な説で,桑原という人が落ちてきた雷さまを助けたという。そこで雷さまが「おまえとおまえの子孫の住む場所には雷を落とさない」と約束をしたのです。それ以来雷が落ちそうになると,誰もが桑原さんの子孫だと「くわばら くわばら」と言うようになったというものである。

四つには,昔から雷は何故か桑畑に落ちないといわれていて,そのために,雷がなると昔は桑畑に逃げたと言われている。そこから,雷が鳴り出すと「くわばら くわばら」と言って,雷を避けるようになったと言われています。

いずれも,雷除けの呪文として言い伝えられている。雷自体ももちろん怖いが,それが,何かの祟りとなると,もっと怖い。菅原道真が代表だが,崇徳上皇とか,将門といい,落雷や地震などの天変地異と結び付けられる。

怨霊については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/407475215.html

でふれたが,たとえば,菅原道真の場合,藤原氏の陰謀で京都から九州の大宰府へと追い払われた。その死後,藤原の関係者は次々と謎の死をとげたとも言われているほどで,京都の御所では雷が落ちるたびに,菅原道真が雷様となって,藤原氏に復讐しているのだと噂された。そこで,京都の人は藤原氏の巻き添えを食って雷に当たらないようにと「ここは道真様の領地ですので雷は落さないで下さい」と言う意味で,領地名「くわばら くわばら」と,唱えた,という尾鰭までがつく。

さらに,叱られたり,お小言を言われることを「雷が落ちる」と表現したことから,これにも「くわばら,くわばら」と唱えるようになった,という説明もある。ただ,怖いものへのおまじないとして,汎用されただけなのかもしれない。ネットには,

「この言葉の由来は,私の記憶では,雷のときに,遠くの桑畑(桑原)に落ち,近くに落ちるなよという願いでつぶやいた,なのですが,友人の説では,桑畑は雷が落ちにくいといわれており,ゆえにくわばらと唱えると言います。」

というのがあったが,ある意味,災難が,

わが身に降りかかりませんようにとの意味で「くわばらくわばら」

と唱えているので,それを,遠くの桑畑(桑原)に,と祈るか,ここは桑原,と祈るかは,大した差ではない。

しかし,「くわばらくわばら」の類語は,捜したが,見つからなかった。たとえば,

南無さん

神様仏様

と,安全,安穏を祈るまじないはあるが,自分だけというあからさまな,呪文は,見当たらなかった。いまや死語だが,「今だけ,カネだけ,自分だけ」という今の時代には,ふさわしい呪文かもしれない。

呪い(まじない)というのは,

神仏その他不可思議なものの威力を借りて,災いや病気などを起こしたり,また除いたりする

という意味だが,「呪い(まじない)」は,語源的には,

「魔+シ(行為)+ナヒ(接尾語)」

で,魔の作用を実現する行為,という意味。「呪(のろい)」という漢字は,「咒」という字を書く。

「口+兄(大きい頭の人)」

で,もともと「祝」と同じで,

「人が祈りの文句を称えること」

で,祝は,サイワイを祈り,呪は不幸を祈ると,別けて使うようになった,とされる。いずれにしても,

口を通して,言葉として発せられることで,呪力をもつ,

と考えられる。つい言霊,と言いたくなるが,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/403055593.html

でも触れたように,言葉そのものに力があるのではなく,神に託すから,その言葉が威力を持つ。まじないという意味では,たとえば,

験を担ぐ(「縁起を担ぐ」から転じた語か,ある物事に対して,よい前兆であるとか悪い前兆であるとかを気にする)

御幣担ぎ(御幣を担いで不吉を払うという意味から,縁起やゲンを担いで,つまらぬことを忌み嫌ったりすること)

と似ているが,言葉,ということに視点を置けば,呪文ということになる。

① 一定の呪術的行為のもとにそれを唱えると神秘的な力が現れるという言葉・文句。まじない・のろいの文句。
② 密教・修験道・陰陽道(おんようどう)などで唱えるまじない。

という意味だが,

ちちんぷいぷい

が一番使われているか。そのほかに,

オン・キリキリ・~ (密教)
臨兵闘者皆陣列在前 (九字)
エロイムエッサイム,我は求め訴えたり(水木しげるの漫画,「悪魔くん」で使われ有名になる)
アブラカダブラ

等々,やはり経文から切り取った言葉が多いが,「なんまいだぶ,なんまいだぶ」が一番身近か。

たかが,「くわばらくわばら」も,探れは奥が深い。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)






今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

posted by Toshi at 05:36
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