2015年06月16日

木偶


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木偶は,

でく,
とも,
ぼくぐう,
とも,
もくぐう,

とも読む。意味は,

木彫りの人形。また,人形。でこ。もくぐう。
操り人形。くぐつ。てぐつ。
役に立たない人。愚か者。でくのぼう。

ということになる。ただ,『大言海』は,

でくるばうの略か,

とあり,「でくるばう」を引くと,

傀儡,

という字を当て,

(人形の操りにて,出で狂ふのより名とす。ばうは,坊にて,嘲り,親しみて云う接尾語)

と注記があり,

ぐぐつ,操り人形,でくるぼ,

と,意味が載っている。ちなみに,「でくるぼまわし」と別項が載っていて,

傀儡子,

という字を当て,

くぐつまわし,人形つかい,

とある。で,ついでに,「くぐつ」の項を見ると,「傀儡」と当て,

(華厳経私記音義,「機関,久久都からくりなり)

と,注記があり,意味が載っている。

①操り人形の類。でくぐつ。てるくばう。傀儡(かいらい)。其の人形を,歌に合わせて舞わす伎を業とする者を,くぐつまわし,傀儡子(かいらいし),
②諸国をめぐるくぐつまわしの妻女(くぐつめ)は,淫を売りしより,くぐつは,遊女の名となる,

「でく」を探ると,以上のようだが,「もくぐう」となると,少し意味が変わり,たとえば,

「副葬用につくられた木製の人形。エジプトでは古くから盛んにつくられ,古代ギリシアでも初期には用いられた記録がある。中国では戦国時代の楚の国で用いられた例が多く,一般に彩色が施されている。」

となる。ここでは,あくまで,日本流の「でく」でいくとすると,語源辞典は,

「手+くづつ(操り人形)」

で,

テクグツ→デクグツ→デク,

と訛ったもの,という説を取る。上方(西日本,福島,栃木)では,

デコ,

というらしい。しかし,「でく」が,「でくるばう」の略,というほうが,僕にはよくそのカタチが見える。つまり,本来は,

でくるばう,

で,それに,

でくのぼう,

で,「坊」を当てたために(「朝寝坊」や「忘れん坊」に倣って「坊」をつけたために),少し意味が変わったのではないか。本来は,「ばう」は,

坊,
ではなく,
棒,

ではなかろうか。木偶人形を見てみたり,操作したことのある人ならわかると思うが,棒の先で,口や目の開閉をする。大学時代,素人ながら,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163102.html

で書いたことがあるように,人形を自分たちで手作りしていたことがあった。そのとき,頭部は,粘土で象ったあと,上に,ボンドと和紙を何重にも重ね貼りし,乾いたところで,中をくりぬき,操作棒をつけて,タコ糸で口や目とつなげて,手元で操作できるようにした。それに衣装を着ける。阿波人形では,

http://www.joruri.jp/html/ningyo/ningyo3.html

と,精巧になっているようだが,木偶は,

棒が中心にある,

のである。「でくるばう」は,その通り,棒が狂うように舞う,というか,そのように操作する。僕らは,中腰でやったが,舞台装置によっては,立ってできるだろう。だから,「木偶」の語源について,

「『でくのぼう』の『ぼう』は,親しみや軽い侮りを表す接尾語としてもちいられているため,『木偶の棒』と書くのは誤りである。」(http://gogen-allguide.com/te/dekunobou.html

とあるが,僭越ながら,『大言海』も含めて,順序が逆である。最初,人形(つかい)を,

でくるばう,

といっていたのであって,それに,後に,「坊」を当てはめたのではないか。本来,もともと,

でくるばう,

といっていたとき,「棒」を指していたと考えなければ,「ばう」を付ける意味が見えない。

因みに,「偶」の字の,「禺」は,「上部が大きい頭,下部が尾で,大頭の人真似ざるを描いた象形文字」。それに「人」を加えて,人に似せた姿であることから,人形の意となった,とある。日本では,木彫りなので,

木偶,

とあてたものだろう。本来,だから,人に似せて人形,の意味で,考えると,

でくるばう,

が,約められて「でく」になったときに,当てられたのではないか,そこから,

木偶の坊,

と当てたと考えた方が,わかりやすい気がする。まあ,素人の億説ですが。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)





今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 05:17
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