2015年06月21日

語るに落ちる


「語るに落ちる」とは,

「問うに落ちず語るに落ちる」

の略である。

問い詰められるとなかなか言わないが,かってに話させるとうっかり秘密をしゃべってしまう,

あるいは,

うっかり本当のことをしゃべってしまう,

という意味である。

「秘密というものは、人に聞かれたときは用心して漏らさないものが、自分から話し出したときはついうっかり口をすべらせて真実を話してしまう」

という人間心理の陥穽を言っているらしい。「落ちる」とは,

白状するという意味,

とするものもある。

「問うには落ちいで語るに落つる」
「問うに落ちぬは語るに落つる」

ともいうらしい。まあ,構えている間は,抑制が効くが,おのずからしゃべっているときは,うっかりと漏らしてしまう,という意味では,

口を衝いて出る,
口走る,

とも似ている。麻生副総理が講演で,

「憲法はある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」

と発言したと言われるが,、まさに,語るに落ちるを地で行っている。この発言から,麻生氏が自分たちが作ろうとしている憲法草案がどういう意味をもっているのか,を漏らしているのである。

どういうわけか,日本の為政者は,語るに落ちるというか,不用意というか,人間の度量が狭いというか,多く,本音を漏らす。

黙して語らず,

などという,おのれを厳しく律するなどというマインドとはおよそかけ離れている。いまの憲法を,

「みっともない」

と,言った総理大臣が,「みっともなくない」と見なしているのが,自民党憲法案を指しているのだとすれば,麻生氏と同様,民主とか民意とかが,よほどお嫌いらしい,ということは想像がつく。

語るに落ちる,

というよりは,

問わず語り,

というほうが妥当かもしれない。もう,言いてたくて言いたくて仕方がないのである。そして,どうせ大したことにはならぬと,高を括っているらしいし,現実にその通りに収まってしまい,ますます図に乗っていく。

ところで,「語る」の語源は,ひとつは,

「タカ(型,形,順序づけ)+る」で,順序づけて話す,

と,いまひとつは,

「コト(物事・事象)+る」で,世間話をする,物事を話す,

の,二説ある。カタリベ,カタライベなどがあるので,随分古い言葉だとされている。『古語辞典』によると,

「相手に一部始終をきかせるのが原義。類義語ツゲ(告)は,知らせる意,イヒ(言)は,口にする意,ノリ(宣)は神聖なこととして口にする意,ハナシはお喋りする意で,室町時代から使われるようになった」

と,注記がある。「ことば」に関わる,





辭(辞)

の違いについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/401176051.html

で触れたことと少し重なるが,「語」の字を調べると,「吾」は,「口+五(交差する意)」からなるが,「五」は,指事文字。×は,交差を表す印。五は,「上下二線+×」で,二線が交差することを示す。片手の指で十を数えるとき,→の方向で(親指から折って)五の数で,(今度は指を立てて,逆の)←方向に戻る,その転回点にあたる数を示す。で,「吾」は,AとBが交差して話し合うこと。後に,吾が我(われ)とともに一人称を表す代名詞に転用されたので,「語」がその原義を表すことになった,という。で,「言(言葉)+吾(交差する)」は,互いに言葉を交わし合う,という意味。

まあ,口でしゃべっていることが,表情や微妙なしぐさに,巧まずして現れる,というから,語るに落ちる,と言わなくても,既に十分,その口の裏が見えていることが多い。

それにしても,語るに落ちる,などは,もはやかわいいとしか,昨今言えなくなった。なぜなら,平然と噓を言って,まるで恥じることがないからだ。やっていることと言っていることが百八十度違っても,あるいは,前言との齟齬があっても,臆面もなく,平然と言い募って恥じることがない。

最早人間としてどうか,と思うレベルで,語るに落ちるとは,ちょっと次元の違う輩が,これだけ政治家として成り立つということは,それを選んでいる日本人,日本社会そのものが,到底信用できない,という証に見える。

前に,「こと」として,事と言が使い分けられていたことについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/403055593.html

で,触れたが,言を事として憚らない,という時代になったのに違いない。

言必ず信、行必ず果,

が望むべくもないが,それにしても,

言必ず偽,行必ず欺,

とは。。。。。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)







今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 05:11
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