2015年07月28日
木で鼻をくくる
木で鼻をくくるは,
きわめてそっけない態度,冷淡な態度をとること,
のたとえとして使われる。
ただ,どうやら,
木で鼻をこくる,
という言い回しが本来らしい。「こくる」とは「こする」「強くこすって取る」の意味で,
「木で鼻をかんでは,紙のようにしなえようがないことから」
そう言うらしい。「くくる」は「こくる」の誤用が慣用化したものであるらしい。
http://www.nihonjiten.com/data/253997.html
によると,
「商家では丁稚に貴重品であったちり紙を使わせず、木の棒で鼻水をこすらせた。『丁稚』の『丁』は下男のことで、下男の通称『久助』は、『久しく奉公する人』を人名のように表した語。」
とある。
ただ,『故事ことわざの辞典』には,意味として,
相手からの相談や要求に対して,無愛想にふるまう,冷淡にあしらう,
という意味の他に,
さっぱりする,
という意味がある。鼻をかんでスッキリする,という意味があるのだろうか。
類語については,前に,けんもほろろで,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/420594101.html?1434140193
で,
取りつくしまもない,
にべもない,
そっぽを向く,
すげない,
鼻にもひっかけない,
木で鼻をくくったような,
つっけんどん,
そっけない,
について検討した際,いずれも,メタファーを使っていることを書いたが,「木で鼻をくくる」は,少しニュアンスが違う。木の葉では,うまく鼻がかめなかったからなのではないか。
それにしても,「鼻もひっかけない」が類語だが,鼻に関わる言葉が,多いのに驚く,たとえば,
鼻も動かさない,
鼻(の先)であしらう,
鼻が利く,
鼻うそやぐ,
鼻が高い,
鼻が曲がる,
鼻突き合わせる,
鼻で笑う,
鼻突く,
鼻で笑う,
鼻にかける,
鼻につく,
鼻の先智恵,
鼻を明かす,
鼻をうごめかす,
鼻も動かさない,
鼻持ちならない,
鼻を折る,
鼻を欠く,
鼻を挫く,
鼻を高くする,
鼻を突く,
鼻をつままれてもわからない,
鼻を鳴らす,
鼻もひっかけない,
鼻薬を嗅がせる,
鼻白む,
鼻高々,
鼻っ柱が強い,
鼻面を取って引き回す,
等々。因みに,「はな」は,
「著しく目立つの意の,ハナ(端)」
が語源。確かに,顔の中心に目立つには目立つが。それから転じて,
先端,
という意味にも用いられる。
岬の鼻,
ハナからうまく行くわけがない,
等々。その場合,「端」の字を当てる。しかし,「ハナ」という言葉が先にあったのだとすると,「鼻」の転用というのは,少し変な気がする。むしろ,「ハナ」を「鼻」に当てることで,「ハナ」の意味にふくらみが出たという感じなのではないか。それには,漢字の「鼻」の字の効果もある気がする。
漢字の「鼻」の字は,
自(鼻の形を描いた象形文字)+界(空気供給)
だと,される。いずれにしても,顔の先についている。顔の尖端についているから,いい面でも,悪い面でも,見事に鼻に出る。ちょっと威張れば,鼻にかける。ちょっと自慢すれば,鼻高々。だから,相手を凹ますのも,鼻を挫く,鼻を明かす。ちょっとあしらいが冷淡なら,鼻先であしらう,となる。相手の感情の機微も,鼻で笑う,鼻も動かさない,で見える。いってみれば,日々の振る舞い,仕草をそのまま感情や意思になぞらえている。目で見えるようだ。こういう言い回しは,日常の中から生まれたに違いない。
しかし,鼻毛となると,随分品が落ちる。
鼻薬を嗅がせる,
鼻毛が長い,
鼻毛を抜く,
鼻毛を読む,
鼻毛を伸ばす,
鼻の下になると,もっと情けない。
鼻の下が長い
鼻の下が干上がる,
鼻の下を伸ばす,
いやはや,鼻にまつわる言い回しだけで,ネタは尽きない。
参考文献;
尚学図書編『故事ことわざの辞典』(小学館)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 04:43
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