2015年12月16日

志気


「士気」

と書くと,

兵士の戦いに対する意気込み。また転じて,集団で事を行うときの意気ごみ,

という意味になる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A3%AB%E6%B0%97

の説明では,

「(しき、英: morale)は、一般に部隊の任務を遂行する上で有用な兵員の心理的な積極性や耐久性を指す。
その他、軍事関係以外にも集団組織行動全般での関係者の行動意欲に関わる心理的高揚のバロメーターを表す。」

とあり,まあ,

士気が上がる,
士気が高い,

という言い方をする。一方,「志気」は,

もの事をなそうとする意気込み

という意味になる。『大言海』だと,それに,

こころざし,気性,

が加わるが,しかし,結果として,両者とも,

やる気,

を指しているように見える。「士」と「志」の字は,「士」は,前にも書いたが,

男の陰茎の突き立ったさまを描いた象形文字で,牡の字の右側にも含まれる,

成人して自立するおとこ,

を意味する。「士気」の語源は,

「士(兵士)+気(元気)」

で,それが一般に転じたとされる。「志」は,

「士印は,進み行く足の形が変形したもので,之(し)と同じ。士女の士(おとこ)ではない。『心+士』は,心が目標を目指して進み行くこと」

と説明されている。で,

「ある目標の達成を目指して心を向ける」

という意味になる。「大志」「とか「立志」の「志」は,目的と訳されることもある。

こうみると,英語に訳すと,共にmoraleになってしまうのだが,「士気」と「志気」の差は,意気込みには違いないが,目的意識の向かう先の差であるように見える。

士気の類語は,

(団体の構成員にその団体が成功を収めたいと思わせる精神)団の精神,モラール, 団結心,

であり,志気の類語は,

(集団における積極的な意志や心意気)意気込み,やる気 ,やるぞという心意気,戦意,モチベーション

となり,両語は置き換わるようで微妙に違う。

「士気」は,所属する集団(の目標)に向かうのに対して,「志気」は,個々の目指す目標を介して集団の目標に向かう,という気がする。

あるいは,同じ集団の意気込みでも,士気は集団に焦点が当たるが,志気は個々人の内側に焦点が当たる。たとえば,「士気が上がる」「士気が高い」(志気が高い,志気が上がるとは言わない)は,

やる気が高い,
やる気が上がる,

と言い替えられるが,集団を指して言うことが多い。個人なら,「やる気がある」「やる気になる」というだろう。

やる気については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/398165296.html

で触れたことがあるが,

やる気は,

遣る気

と当てられる。遣る気は,辞書(『広辞苑』)には,

「ものごとを積極的に進めようとする目的意識」

とある。他の辞書だと,

進んで物事をなしとげようとする気持ち,

というニュアンスだが,「目的意識」とあるのがみそだと思う。

遣る気の「遣る」は,語源的には,

「自分の身から遠くへ動かす行動」

という意味で,送る,遣わす,与える,進ませる,はかどらせる等々の意味,とある。辞書(『広辞苑』)には,大きく分けて,

その場の勢い,成り行きに任せて他方へ行かせる,
(身分が同等以下の者に)与える,
自ら物事を行う,
(他の動詞の連用形について)動作が完了する意,動作を遠くから行われる意(晴れやらぬ,見遣る),

等々といった使い分けがあるが,どうも「遣る気」は,

「自らが物事を行う」気,

という使い方で,そこに,漫然とというよりは,目的がある,つまり,

その気になる,

というニュアンスがあるような気がする。その意味で,「志気」に重なるのである。

しかし,前に,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/430156866.html

で,触れたが,類語の,モチベーションという言葉は,

動機づけ,

つまりは,辞書的には,

「人や動物の行動を引き起こし,一定の方向に向かわせる一連の行動」

とあり,まあ,パヴロフやスキナーの無条件であれ,オペラント条件付けであれ,犬や鳩じゃああるまいし,餌づけするように意欲を引き出そうとする,モチベーション理論には,忌避感がある。内発的だの外発的だのというのは,働かせようとする者が,働く意欲を引き出そうとする発想に見えてならない。そこには,

「士気を高めよう」

というのと同じ上から(あるいは部外からの)目線を感じてならない。それに比べて,

やる気を起こす,
とか
やる気を引き出す,

という言葉には,そもそも内にあるやる気スイッチをどうやって点火できるかという視点があるように思える。

つまり,やる気があるとは,それをするための「何か」(目的)が自分の中にあることなのである。それをするためならその気になれる,たとえば,それをする意味や価値や魅力(大切さや値打ち,面白さや楽しさ),興味や関心,自己表現(目立つ,存在感,賞賛)等々が必要なのである。そのうちからの視点が,

やる気,

だとすると,「志気」とは重なるが,「士気」には重ならない。視点の位置が違うのである。


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posted by Toshi at 06:13
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