2016年02月20日

引導


何やら引導を渡されたような気分で,目の前が真っ暗というか,頭の中が真っ白になる,ということがある。

引導とは,辞書(『広辞苑』)には,

仏教用語,迷っている衆生を導いて,仏道に入らせること,また,死者を済度するため,葬儀の時導師が棺前でに立ち,転迷開悟の法話を解くこと,

導くこと,手引き,

と載る。「引導を渡す」と言う言い方をするが,上記の仏教用語から転じて,

最後の決意を宣告してあきらめさせる,

とある。

http://www.shorinzenji.com/%E4%BD%8F%E8%81%B7%E3%81%AE%E8%A9%B1/%E5%BC%95%E5%B0%8E%E3%82%92%E6%B8%A1%E3%81%99/

では,

「私の場合、葬儀の開式から25分から30分で引導です。
故人の生前での生き方や功績などを讃えます。
その後、死の事実を認識させ、現世の執着を棄て、悟りの道(仏道)へ進むよう説き、この世から悟りの世界へお導きさせて頂きます。
最後の方では、「喝(カツ)」「露(ロ)」などと目が覚めるように激しく悟りを促したり、「咦(いぃ~)」など優しく説いたりします。
事実(真実)を語り、故人様が自らの死に向き合うための儀式でもあります。」

と,具体的な「引導の渡し方」の例示がある。つまりは,

「死んだことをわからせる儀式であることから,相手が諦めるための最終的な宣告のいみでつかわれるようになった」

と,『語源由来辞典』には載る。『語源辞典』には,

「中国語の『引(手引き)+導(導く)』が語源です。仏教で,衆生を導き善道に入らせること,をいいます。」

とあるところからも,ほぼ仏教語なのだろうとは思う。しかし,

http://oshiete.goo.ne.jp/qa/287629.html

には,

「『引導』というのは、元々中国で古くから使われていた言葉で、特に『道教』では、一種の気息術か、呼吸法で、大気を吸い込むことを言いました。しかし、普通の言葉として、『手引きする』『案内する』というような意味があります。
仏典を漢訳するとき、サンスクリット語 parikarsana の訳語に、この『引導』を選んだのです。『法華経』では、人々を導いて仏道に入らせる意味で使われています。また、死者を済度する意味でも使います。
後に、死者の葬儀の時、導師が、棺の前で、法語や仏教の教えの詩(ガーター)を語って、死者を、迷界から浄土へと導くよう試みる儀式のことになります。
これを、『引導を渡す』と言います。『迷界から浄土へ導く』とは何かと言うと、これは、死者に、『死んだ事実』を確実に認識させ、現世への執着を棄て、悟りの仏道へと進むよう説くことだとも言えます。つまり、『お前は間違いなく死んだ』ということを、死者に宣言する儀式にもなります。こういう『引導を渡す』という形の儀式をしたのは、中国黄檗集の祖、黄檗希運で、彼は9世紀頃の人です。」

とあり,本来は,日常的にも使われていた,「引導」を,転訳したというのが,正確にようだ。

その意味で,『大言海』は,最初に,

ひき,導くこと,てびき,

という意味を最初に載せ,見識を示す。例示として,

「有羣(ぐ)魚躍水飛空引導」

と,南史を引き,

「右大臣殿,此事引導口入,可進名簿歟」

と,明月記の例も引く。その意味では,始まりはともかく,「引導」が,

手引き,

という意味を持っていたために,転用されたことをよく示す。

因みに,「引」という字は,会意文字で,

「弓+|印」で,|印は,直線状に↓と引くさまをしめす,

と言う。「導」という字は,

「道は,『辶(足の動作)+音符首』の会意兼形声文字で,頭を一定の方向に向けて進むこと。また,その道。導は,『寸(て)+音符道』で,道の動詞としての意味を示す。」

で,一定の方向に引っ張っていく,と言う意味になるが,

「古くは,道で代用した。訓の『みちびく』は,『みち(道)+引く』から」

と,注記がある。因みに,「寸」が「て」というのは,「寸」の字が,

「『手のかたち+一印』だ,手の指一本の幅のこと。一尺は,手尺の一幅で,方向に22.5㎝。指十本の幅が丁度一尺をあらわす」

という謂れから。

「引導を渡す」の類語はあまりないが,「とどめを刺す」と対比して,

「(引導を渡すは)仏教用語から転じて、『最終的な宣告をして、諦めさせる』という意味があるようですが、これは『最終的な宣告をする』にウェイトがあります。引導を渡しても、相手が納得するとか、諦めるとは限らないからです。
仏教なら、『お前は死んだのだ、そのことを知り、成仏せよ』と引導を渡しても、死者が納得せず、この世への未練から、亡霊などになったり、輪廻に落ちるということは、別に珍しいことでもないからです。
他方、『止めを刺す』というのは、殺したはずの相手を、生き返る余地などないように、念を押して、首を突くとか心臓を刺して、死を確実にすることです。ここから転じて、念を入れて、終わらせるという意味になります。」
.
とあった。引導は,メッセージだが,とどめは,アクションというわけである。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm


posted by Toshi at 05:24
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