2016年09月30日

ポジティブ感情


マーティン・セリグマン『世界でひとつだけの幸せ―ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生』を読む。

世界でひとつだけの幸せ.jpg


正直,このタイトルには引いた。ポジティブ心理学のセリグマンの著作でなければ,手にすることもなく,無視したであろう。原題は,

Authentic Happiness

である。邦題との乖離は大きい。ぶっちゃけいえば,

幸せを目指す,

などということを聞くと,浮世離れした人だと思うことにしている。幸せは目的ではない。それについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/429261226.html

で触れた。著者は,

「私の関心事は,幸福を定義することではなく,ポジティブな感情と強みを分析し,どうすればその感情と強みを増やすことができるかという『幸福の構成要素』をあなたに教えることだ」

という。それは,「学習性無力感」を研究するなかで,

「最悪の状況におちいっても,快復のきざしを見せる患者たちの存在」

に気づき,

「無気力感に屈しない人たちがもつ弾力性のある強さ」

に着目し,ポジティブな感情に焦点を当て,

「本書の最大のテーマは,心の病を和らげる精神病理の知識に,人々の備えもつ強みと美徳,そしてポジティブな感情についての知識をプラスして,今までの心理学のバランスを修正し,ポジティブ心理学を発展させることにある。」

と,冒頭で書く。そして,こう加える。

「それにしても,既存のポジティブ心理学の本は,どうしても刹那的な『幸福論』や『快楽論』の域をでないのだろうか?幸福をもたらす質の良い生活とは,単純に,良い時間の総量から悪い時間の総量を差し引いたものだと,快楽主義者は指摘する。事実,大多数の人たちが,このゴールに向かって生活を営んでいる。しかしこの論理は,まったく浮世離れしている。刹那的な感情の合計とは,映画や休暇,結婚といったエピソードが,その人にとって良かったか悪かったか判断しただけの,欠陥だらけの論理に過ぎないからだ。」

そこで,パート1では,ポジティブな感情の,

進化の過程でポジティブな感情を得た理由は何か,
ポジティブな感情を多く持つ人と持たない人の差は何か,
日常生活で,ポジティブな感情を持続させる秘訣は何か,

の答えを,調査結果に基づいて出し,パート2では,

心身ともに健康な状態とはどういうことか,

を知るために,自分の強みや美徳を理解する必要がある,これがテーマになる。強みについて,こう著者は書いている。

「強みには,性格と深くかかわるものと,あまりかかわれりのないものがある。私は,性格と深くかかわる強みのことを『とっておきの強み』と呼んでいる。あなたが,『とっておきの強み』と『性格とは関係のない強み』とを区別できるようになることも,本書の目的のひとつである。」

と。それは,

「良い人生とは,毎日の生活の主要な領域で,自分の強みを使うことによって引きだされる幸せの中にある。有意義な人生とは,人生を豊かにするのと同じ強みを使って,さらに知識や力,善良さを促進することだ。そういった人生は意義深いものになるだろう。」

と,末尾の結論に書いていることとも関わっている。そしてパート3では,

豊かな生活とは何か,

について応えていく。ここにあるのは,目的化した「幸せ」ではなく,

どう生きるか,

についての,ポジティブ心理学からの提案なのである。随所にセルフチェックを交え,自分の強み発見へといざなっていく。有名なのかどうか知らないが,

H(永続する幸福のレベル)=S(あらかじめ設定された幸福の範囲)+C(生活環境から得られる幸せ)+V(自発的にコントロールする要因),

という数式を示す。遺伝的要因,環境的要因はあるが,掛け算ではない。自発的な要因というのは,

ポジティブ感情次第,

という含意である。たとえば,

「楽観的な人は,良い出来事が起きた要因を『能力』や『特性』といった永続的な言葉で説明し,悲観的な人は,『気分』や『努力』といった一時的な言葉で説明する。」(逆に「悪い出来事については一時的で特定的な説明をする」)

それは,自分がコントロールできる力があると思えているかどうかを左右する。

だからといって,

「もし人生のすべてがポジティブな感情の追求だけにささげられるとしたら,本物の幸せやその意味は見つからないだろう。…アリストテレスが提示したごとく,『どうしたら幸福になれるか』ではなく,『充実した人生とは何か』と問うべきなのだ。」

と著者は,釘を刺すことを忘れていない。ここが,ポジティブ心理学をまがいものにしない所以だと,思う。

因みに,著者は,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/442342315.html?1475092111

で触れたフロー体験についても,強みがいるとして,

とっておきの強みを意識する,
日々その強みを活用できる仕事を選ぶ,
とっておきの強みをもっと発揮し,現在の仕事への取り組み方を見直し,改善する,

等々を挙げている。

参考文献;
マーティン・セリグマン『世界でひとつだけの幸せ―ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生』(アスベクト)


ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:00
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