2016年12月05日

あけぼの


「あげぼの」は,

曙,

と当てる。

「夜明けの空が明るんできた時。夜がほのぼのと明け始めるころ。朝ぼらけ」

とあり,「あさぼらけ」と同義とある。「あさぼらけ」は,

「朝がほんのりと明けてくる頃,あげぼの,しののめ」

とある。「しののめ」は,

東雲,

と当て,

「一説に,『め』は原始的住居の明り取りの役目を果たしていた網代様(あじろよう)の粗い編み目のことで,篠竹を材料として作られた『め』が『篠の目』と呼ばれた。これが明り取りそのものの意となり,転じて夜明けの薄明かり,さらに夜明けそのものの意になったとする」

と注記して,

東の空がわずかに明るくなる頃。明け方,あかつき。あけぼの。」

の意で,転じて,

「明け方に,東の空にたなびく雲」

の意とある(『広辞苑』)。「あかつき」は,古代の夜の時間を,

ユウベ→ヨヒ→ヨナカ→アカツキ→アシタ,

の「あかつき」で(因みに,ヒルは,アサ→ヒル→ユウ,となる),

暁,

と当てる。

「現在では,やや明るくなってからを指すが,古くは,暗いうち,夜が明けようとするとき」

とある(以上『広辞苑』)。おそらく,「夜明け」という時間幅の中で,夜が明ける前の時間帯を,細かくわけていたらしいのである。ほかにも,

あさまだき,

という言い方がある。これは,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/442024908.html

で触れたが,語源的には,

「朝+マダキ(まだその時期が来ないうちに)」

で,未明の意だが,『大言海』は,

「マダキは,急ぐの意の,マダク(噪急)の連用形」

とあり,「またぐ」を見ると,

「俟ち撃つ,待ち取る,などの待ち受くる意の,待つ,の延か」

とあり,

「期(とき)をまちわびて急ぐ」

意とあるので,夜明けはまだか,まだか,と待ちわびている,

朝のまだ来ない,

という意になる。これが未明の時間帯の総称として,「暁」と「あけぼの」については,

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1145636881

「『曙』は明るんできたとき。『暁』は、古くは、まだ暗いうちから明け方にかけてのことで、『曙』より時間の幅が広い」

とあり,「あかつき」は,

アケヌトキ(未明時)→アケトキ→アカトキ・アカツキ,

と転じたようだから(『日本語の語源』),

ヨナカ→アカツキ→アシタ,

の間を広く言うとすると,その時間幅を,細かく分ける,

あけぼの,
あさぼらけ,
しののめ,

はどういう順序なのだろうか。

『デジタル大辞泉』の,「あけぼの」の項に,

「ほのぼのと夜が明けはじめるころ。『朝ぼらけ』より時間的に少し前をさす。」

とあり,「あさぼらけ」の項に,

「夜のほのぼのと明けるころ。夜明け方。『あけぼの』より少し明るくなったころをいうか。」

とある。『古語辞典』に,「あけぼの」に,

「ボノはホノカのホノと同根」

とある。「仄か」とは,

「光・色・音・様子などが,薄っすらとわずかに現れるさま。その背後に大きな,厚い,濃い確かなものの存在が感じられる場合にいう。」

のだという。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/a/akebono.html

も,

「あけ(明)」と「ほの(ぼの)」の語構成。 「ほのぼのあけ(仄々明け)」とも言うように、「ほの」は「ほのぼの」「ほのか」などと同源で、夜が明け始め、東の空がほのかに明るんでくる状態が「あけぼの」である。 古くは、暁の終わり頃や、朝ぼらけの少し前の時間をいった。漢字の『曙』は、『日+音符署(しょ)』であるが、この『署』には『文書を集めておく役所』という意味はなく、『曙』は日光が明るくなることを表した会意文字である」

としている。『語源辞典』も,「あけぼの」については,

「明ケに,ほのぼの,ほのかのホノを加えた語」

とある。どうやら,

あけぼの→あさぼらけ,

ということになるのだが,『日本語の語源』は,

「アサノホノアケ(朝仄明け)は,ノア(n[o]a)の縮約でアサホナケになり,『ナ』が子音交替(nr)をとげてアサボラケ(朝朗け)になった。『朝,ほのぼのと明るくなったころ…』の意である。」

とするので,「朝ぼらけ」「あけぼの」はほとんど近接しているのかもしれない。

「しののめ」は,『語源辞典』は,

「シノ(篠竹)+目」

で,「篠竹の目の間から白み始める」意となる。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/si/shinonome.html

も,

「漢字で『東雲』と書くのは、東の空の意味からの当て字。 語源は『篠の目(しののめ)』で あろう。古代の住居では、明り取りの役目をしていた粗い網目の部分を『め(目)』といい、篠竹が材料として使われていたため『篠の目』と呼ばれた。この『篠の目』が『 明り取り』そのものも意味するようになり、転じて『夜明けの薄明かり』や『夜明け』も『しののめ』というようになった。」

とする。しかし,これは人が夜が明けるのに気づくのを言っているのであって,その時刻が,「あけぼの」なのか「あさぼらけ」なのか,の区別はつかない。

『日本語の語源』は,「しののめ」について,

「イヌ(寝ぬ。下二)は,『寝る』の古語である。その名詞形を用いて,寝ている目をイネノメ(寝ねの目)といったのが,イナノメに転音し,寝た眼は朝になると開くことから『明く』にかかる枕詞になった。『イナノメのとばとしての明け行きにけり船出せむ妹』(万葉)。
名詞化したイナノメは歌ことばとしての音調を整えるため,子音[∫]を添加してシナノメになり,母音交替(ao)をとげて,シノノメに変化した。(中略)ちなみに,イネノメ・イナノメ・シノノメの転化には,[e] [a] [o]の母音交替が認められる。」

と,「篠竹」説を斥けている。こうみると,「目を開けた」時を指しているとすると,

しののめ→あけぼの→あさぼらけ,

なのか,

あけぼの→あさぼらけ→しののめ,

なのかの区別は難しいが,一応,いずれにしても,人が気付いた後の夜明け時の順序なのだから,

しののめ→あけぼの→あさぼらけ,

を,暫定的な順序としてみるが。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
田井信之『日本語の語源』(角川書店)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm
posted by Toshi at 05:31
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