2017年04月07日

あっぱれ


「あっぱれ」は,

天晴れ,
遖,

と当てる。「遖」は,国字。

「辶+南」

の会意文字として作ったらしいが,峠や裃という他の国字に比して,出来が悪いせいか,ほとんど使われない。

「感動詞アハレの促音化」

で,『大言海』は,

「アハレの急呼」

とする。昨今はほぼ使わないが,

「天晴,よくやった」

というような,感動したり,ほめたたえるときに使う。『日本語源広辞典』には,

「中世の用法」

とある。『日本語源大辞典』には,

「『あわれ(哀)』を促音化して,意味を強めたもの。中世の初めごろから見られる。特に形容動詞の場合,しみじみとした情趣・感情を表すという広い意味を持っていたアワレに対して,アッパレは賞賛する気持ちを表し,アワレとは別語として意識されるようになった。のち,アワレは悲哀の意味に限定され,ますます意味の差が大きくなった。」

とある。同じことを,『由来・語源辞典』,

http://yain.jp/i/%E3%81%82%E3%81%A3%E3%81%B1%E3%82%8C

も,

「『哀れ』は現代では悲哀の意味だが、本来は喜怒哀楽いずれの感情もいう語であり、そのうちの良い意味を強調したのが『あっぱれ』である。古くは『あっぱれ』も悲哀や驚愕を示すこともあったが、時代とともに賞賛の意味に固定され、逆に『哀れ』は悲哀の意味だけに固定されることになった。」

とする。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/a/appare.html

は,より深く,

「あっぱれは『哀れ(あわれ)』と同源で、感動詞『あはれ』が促音化した語である。『あはれ』は感動語『あは』に接尾語の『れ』がついたもので、喜びも悲しみも含めて心の底から 湧き出る感情の全てを表す語であった。 中世以降、賞賛の意味を込めて言う時は、促音化した『あっぱれ』がもちいられるようになり、『あはれ(あわれ)』が『嘆賞』『悲哀』などの感情を表す言葉となった。漢字で『天晴れ』と書くのは、意味や音から連想された当て字で語源との関係はない。またあっぱれの漢字には、『天晴れ』の他に『遖』という国字もある。国字の『遖』は、南の太陽の光を受けて明るく見事であることを表した会意文字で、『天晴』を一字で表したような感じであるが、一般には滅多に使われていない。」

と,「あわれ」との関係に言及する。

「あわれ」は,

哀れ,

と当て,『古語辞典』は,

「事柄を傍から見て讃嘆・喜びの気持ちを表す際に発する語。それが相手や事態に対する自分の愛情・愛惜の気持ちを表すようになり,平安時代以後は,多く悲しみやしみじみとした情感あるいは仏の慈悲を表す。その後力強い讃嘆は促音化してアッパレという形をとるに至った」

としている。恐らく,単なる感嘆詞だった,その段階では状態表現に近かったものが,いつの何か価値表現へとシフトして,その価値に対する主観的感情の表現へと転じた,ということだろう。その感情が,

哀しみ,

感嘆,

に分岐して,「あわれ」と「あっぱれ」の使い分けへと至った,ということになる。「あわれ」の語源が,『日本語源広辞典』では,

「ああ+はれ」

と,感動詞の重なりとし,『大言海』も,

「アも,ハレも感動詞」

とする。そして,「あ」は,

噫,

を当て,

「多くは,重ねて,アア(嗚呼)と云うふ」

とある。「はれ」も感動詞で,

「噫(あ)を添へて云ふ」

とあるが,

やれ,
とか,
まあ,

という囃し言葉である。どうやら,「あわれ」は,傍から,感嘆して,

はやしていた,

ときの,「よーよー」というようなニュアンスの言い回しだったのではないか。ただ,『日本語源大辞典』は,

「語源を『あ』と『はれ』との結合と説くものが多いが,二つの感動詞に分解しうるかどうか疑わしい」

とする。異説には,

ア(彼)ハに,ヤ・ヨに通じる感動詞レが添わったもの(折口信夫),
自然音アの修飾であったらしい(柳田國男),
アアアレ(有)から(名言通),
天岩戸の故事から,アメハレ(天晴)の略(日本釈名),
アという嘆息の声から(紙魚室雑記・和訓栞),

等々ある。臆説かもしれないが,

あああれ,

から,

あはれ→あっぱれ,

と転じた気がする。語呂合わせよりは,和語の特性から,文脈を共有する者の中でのみ通用する言い方から発生した,ということを強く感じるからだ。

ちなみに,熊倉千之氏は,「あ」は,「開かれた音」で,「開かれた」イメージをもたらす,という。そして,

「開かれた音『ア』にもう一つ音節をつけるとすれば『アア・アイ・アウ・アエ・アオ』がいずれも意味をなさず(『青』は古くは『アヲ』なので),『アカ(赤)』が辞書の上ではほとんど最初のやまとことばです。この『アカ』に関連して『アカ(赤)シ』という形容詞や,『アカトキ(暁)』という名詞や,『アカ(明)ス』・『アカ(明)ル』(明るくなる意)という動詞などがありますから,『開かれた母音の/a/』が,こうしたことばの基底にあると言えるでしょう。」

と書く。その「あ」の,外へ向かう発語の含意が,「あはれ」にも「あっぱれ」にもある。やはり,

アアアレ,

は捨てがたい。

参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
熊倉千之『日本語の深層』(筑摩選書)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 04:27
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