2017年04月08日


「き」は,

木,
樹,

と当てる。樹木のことである。「き」は,

コ,

と訓む。

「木(き)」の交替形(『大辞林』),

とか,

「き(木)」の古形(『広辞苑』),

とか,

木の転(『大言海』),

等々言われるが,

木立ち,
木の葉,
木の実,

等々他の語に冠して複合語を作る。これについては,「ほのか」

http://ppnetwork.seesaa.net/article/446671381.html

で触れたように,

ほ(ho)→ひ(hi),
こ(ko)→き(ki),

と,

「キ(木)に対して,複合語に現れる『コ』(木立ち,木の葉)と並行的な関係にある」

とされている。

さて,「き」の語源であるが,『大言海』は,

「生(いき)の上略。生々繁茂の義」

とするが,「こ(木)」が「き(木)の古形」(『広辞苑』)とするなら,この説は取れなくなる。しか『日本語源広辞典』は,

「『生きikiで,語頭のイが脱落して,kiとなったもの』という大言海説が,有力」

とする。しかし,『日本語源大辞典』は,『大言海』以外にも,

イキ(生)の上略(日本釈名,名言通,和訓栞,国語の語幹とその分類),

とする説を紹介したうえで,

ケ(毛)の転。素戔嗚尊の投げた毛が木になったという伝説から(円珠庵雑記),
木は大地の毛髪であるところから(日本古語大辞典),
生えるものを意味するク(木)から,コ(木),ケ(毛・髪)も同源説(続上代特殊仮名音義),
キ(黄)義(言元梯),
草がクサクサとして別ち難いのに対し,木はキッと立ち,松は松,梅は梅とキハマルところから(本朝辞源),
ツチキ(土精気)の上略で,キムシ(地気生)の義(日本語原学),
キリ(切),または,コリ(樵)の反(名語記),
五行相剋の説では,金剋木といって木は金にキラルルところから(和句解),

等々と挙げる。「くさ」と「き」の差別化という説に魅力を感じるが,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ki/ki.html

も,

「語源は以下のとおり諸説あり未詳。 『イキ(生)』の上略とする説。生えるものを意味する『キ・ク(生)』のことで、『毛』などと同源とする説。 素戔鳴尊(すきのおのみこと)の投げた 毛が木になったという伝説から、『毛(け)』が転じたとする説。一本生えているものを『立木(たちき)』、何本も生えているものを『木立(こだち)』というように『立つ』と共用することや、草に対してキツと立っているなど,突っ立っていることが原義であったとする説。その他多くの説があるが、上記あたりが妥当と考えられる。」

と,草との対比を取っている。「くさ」の語源は,『大言海』は,

「茎多(くくふさ)の約略なりと云ふ説あり」

と,自信なげである。『日本語源大辞典』は,

カサカサ,グサグサという音から(国語溯原),
キ(木)と同源語で,ケ(毛)から分化したもの(日本古語大辞典),
キ(木)と同根のクに接尾語サをつけたもので,サは柔らかく短小であることを表す(語源辞典),
クサフサ(茎多)の約略か(古事記伝・大言海),
年毎に枯れてクサル(腐る)ものであるから(日本音声母伝・名言通,和訓栞・言葉の根しらべ)
「神農百草をなめそめられし」とあることからクスリのサキという義か。またはクサシ(臭)の義か(和句解),
クサグサ(種々)の多い義(日本釈名),
カルソマの反。ソマは,茂ることによせて杣の義(名語記)

等々と載せる。

億説かもしれないが,

年毎に枯れてクサル(腐る)ものであるから,

とする説が気になる。

くさくさ,

は,「くさくさする」などという擬態語だが,「腐る」からきている。これは,

くしゃくしゃ,
むしゃくしゃ,

とバリエーションがある。「くさ」は,

腐る,

から来たのではないか,という気がしてならない。とすると,「き(木)」は,それと対比されて,言い表された。しかし,もともとは,「け(毛)」と同様の,

「生えるものを意味するク(木)から,コ(木),ケ(毛・髪)も同源説」

が捨てがたい。

ke→ko→ki,

ではないのか。因みに,『語源由来辞典』,

http://gogen-allguide.com/ku/kusa.html

は,

「『カサカサ』『グサグサ』といった音からとする説や、『毛』から分化したとする説。『クサフサ(茎多)』の約略や,毎年枯れることから『腐る』の意味など諸説あるが,説得力に欠ける。『く』は『木』が『コ』『キ』『ク』と母韻変化することから、『茎』の『く』と同じく『木』を表したものと考えられ。『さ』は,接尾語『さ』で,木が硬くて大きくて真っ直ぐなのに対して,草は柔軟で短いことから,木と区別するために加えられたものであろう。」

音韻変化を取りつつ,木との差異からとしている。

しかし,「け(毛)」の語源は,『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/ke/ke.html

が,

「生える物の意味で『生(き・け)』から出たとする説や、『細(こ)』が転じて『毛(け)』になっ たとする説、『気(き)』の転など10種以上の説があり、語源は未詳であるが、『生(き・け)』とする説が有力と考えられている。」

というように,種々あり,『日本語源大辞典』は,

キ(気)の転(日本釈名・和語私臆鈔・碩鼠漫筆・和訓栞),
キ(生)の義から(国語の語幹とその分類),
クサ(草)のクと同義(玄同放言),
コ(細)の転(言元梯),
小さいところから,キレ(切)の義(名言通),
外気から肌を防ぐところから,キサヘ(気塞)の義(日本語原学),
ヌケハゲ(抜禿)するからか(和句解)て,
禽獣刷毛によって肥えてみえるところから,こえ(肥)の反(名語記),
細い毛の意(日本語原考),
シラガ(白髪)のカが古形で,鬣(たてがみ)の意の朝鮮語kalkiと同源か(日本語の起源),

と載せるが,語呂合わせはともかく,『古語辞典』には,「け(毛)」は,

古形カ(毛)の転,

ともあり,

「キ・コ(木)」と「カ・ケ(毛)」「クサ(草)」の音韻のつながりは深い。やはり,

生えるものを意味するク(木)から,コ(木),ケ(毛・髪)も同源説,
キ(木)と同源語で,ケ(毛)から分化したもの,

と見るのが妥当のようだ。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm

今日のアイデア;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/idea00.htm

posted by Toshi at 05:05
"き"へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: