2018年09月09日

ぐる


「ぐる」は,

グル,

と表記する「導師」のいみのそれではなく,

ぐるになる,

の「ぐる」である。

(悪だくみの)仲間,
示し合わせて悪事を企てる仲間,一味,

というようにあまりいい意味では使わない。『江戸語大辞典』にも,一味,同類,の意として載るほど,かなり昔から使われている。『江戸語大辞典』には,「ぐる」の意味で,その他に,

繰り・浄瑠璃社会及び芝居者隠語,帯,

という意味が載る。「ぐる」は何かの集団の隠語ではないかと思われるので,少し気になる。

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(白浪五人男 稲瀬川勢揃いの場 文久二年 (1862) 三月江戸市村座初演時の役者絵。三代目歌川豊国画、大判三枚続物。左から三代目關三十郎の日本駄右衛門、初代岩井粂三郎の赤星十三郎、四代目中村芝翫の南郷力丸、初代河原崎権十郎の忠信利平、十三代目市村羽左衛門の弁天小僧菊之助。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9D%92%E7%A0%A5%E7%A8%BF%E8%8A%B1%E7%B4%85%E5%BD%A9%E7%94%BBより)

その『江戸語大辞典』は,

「ぐるめ」の略とも「ぐるぐる」の略とも,

としている。「ぐるめ」とは,「ぐるみ」で,

~ぐるみ,

という言い方を今もする。その「ぐるみ」は,

くるむの連用形連濁,

で,

ひっくるめて,
~ごと,

という意味である。「ぐるぐる」は,『岩波古語辞典』に,

回転するさま,
幾重にも巻きつくさま,

とあり,これも,「ひっくるめる」と重ならなくもない。『日本語源大辞典』は,

「クルムの名詞形」

とし,

「家族ぐるみなどのグルミが語幹だけ使われた」

とする。『由来・語源辞典』(http://yain.jp/i/%E3%81%90%E3%82%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B)は,

「一説に、物が回ったり巻きついたりするする様子を表す擬態語『ぐるぐる』から来た言葉で、ぐるぐると輪になって相談する様子から」

とする。個人的には,「ぐるみ」が,常識的には妥当に思える。

『大言海』は

「トチグルヒの上下略ならむか(ねぐらかへ,くらがへ。がさつき,がさつ)」

というが,例示から見ると説得力があるが,語感からすると,少し無理かもしれない。その他,

「ぐるりと輪になって密談することに由来する。」

と言う説もある(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AB_(%E6%9B%96%E6%98%A7%E3%81%95%E5%9B%9E%E9%81%BF)が,如何であろうか。

『語源由来辞典』(http://gogen-allguide.com/ku/guru.html)は,

「語源は諸説あり、同じ輪の中に入る意味で『グルグル』や『包(ぐるめ)』などの略。 江戸 時代には着物の帯を『グル』と言っていたため、帯のイメージから連想したとする説があり、どちらも輪になる意味を持つため有力と考えられる。 一説には、馴れ合いを意味する隠語『とち狂ふ(とちぐるふ)』の略とする説もある。
江戸末期の歌舞伎では『共謀』を『くる』と呼んだ例があるため、グループの略とする説は明らかな俗説である。
また、『グルグル』の説の中には、子供の遊戯『かごめかごめ』で鬼を取り囲むことから、共謀して苛めることを言うようになり転じたとする説もあるが、江戸末期以前にカゴメ遊びが『グル』と呼ばれたり、『グルになる』などと言われた例は見当たらにない。」

と整理するにとどめるが,「ぐるめ」ではなく,「ぐるみ」と表記すると,「ぐる」との隅の重なりが一層際立つ気がする。ただ,

https://japanknowledge.com/articles/blognihongo/entry.html?entryid=161

で,『日本国語大辞典 第2版』の,

「目代(めしろ=目付役)になる此の乳母(うば)はぐる也」(浄瑠璃『鑓の権三重帷子』)
「うぬはあの野郎と共謀(グル)だな」(歌舞伎『勝相撲浮名花触(かちずもううきなのはなぶれ)』)

を引きつつ,

「歌舞伎の用例のように『共謀』と書いて『ぐる』と読ませている例もある。『日本国語大辞典』で引用した用例はほとんどが浄瑠璃や歌舞伎の例なので、ひょっとすると芝居関係者の隠語だったのかもしれない。」

としている。『江戸語大辞典』を見ると,

「さる女郎と茶屋とぐるになって田舎客をむごくひったくりし事あり」(蕩子筌枉解)
「おかねまでがぐるになって承知しそふもねへもんだが」(通仁枕言葉)

と,それ以外の用例もあるので,芝居関係とは断定できない。隠語節用集は捨てがたいが,「ぐるみ」に落ち着くのが妥当だろう。

参考文献;
前田勇編『江戸語大辞典 新装版』(講談社)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:16
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