2019年05月10日


「子」は,

児(兒),

とも当てるが,鳥の子の意で,

卵,

とも当てる(岩波古語辞典)。

大和の国に雁卵を産と汝は聞かすや(古事記)

という用例がある。

「たまきはる 内の朝臣(あそ) 汝(な)こそは 世の長人(ながびと) そらみつ 倭の国に 雁卵生(かりこむ)と聞くや」

と天皇が問うのに対して,建内宿禰命(たけうちのすくねのみこと)が,

「高光る 日の御子 諾(うべ)しこそ 問ひたまへ まこそに 問ひたまへ 吾こそは 世の長人 そらみつ 倭の国に 雁卵生(かりこむ)と 未だ聞かず」

と答えた,というのである。「雁卵生」を「かりこむ」と訓ませた。伊勢物語にも,

「鳥の子を十づつ十は重ぬとも人の心をいかが頼まん」(伊勢物語)

の,「子」も「卵」の意である。

「子」(呉音漢音シ,唐音ス)の字は,

「象形。子の原字に二つあり,一つは小さい子どもを描いたもの。もう一つは子どもの頭髪がどんどん伸びるさまを示し,おもに十二支の子(ネ)の場合に用いた。のちこの二つは混同して子と書かれる。」

とあり(漢字源),「児(兒)」(漢音ジ,呉音ニ)の字は,

「象形。上部に頭蓋の上部がまだあわさらない幼児の頭を描き,下に人体の形を添えたもの」

とあり(仝上),「小兒の頭囟(シン)未だ合はざるに象る」ともある(字源)。「囟」は,

「泉門(せんもん)。胎児や新生児の頭蓋骨にある、前後左右の骨の間にある隙間。成長するにつれて骨が接合していくため、隙間は無くなる。ひよめき。おどりこ。」

の意である(https://kanji.jitenon.jp/kanjio/7413.html)。「小兒の頭上の微かに動く所,頭會の脳蓋,頂門」(字源)ともあり,

「(ひよめき)は、幼児の頭の骨がまだ完全に縫合し終わらない形。思は、心臓の動き(脈拍)につれてヒクヒクとひよめきが動くこと。脳をおおっている頭蓋骨が心臓の鼓動でゆれるさま」

である(https://blog.goo.ne.jp/ishiseiji/e/02e8baeba431b3dd3c289b67212240e5)。実によく見ている。

「子」は,

親に対して子,

であると同時に,

「親が子を呼びしに起こりて,自らも呼びし語なるべし,男之子(オノコ),男子(ナムシ)の子(シ)なり。左傳,昭公十二年,注『子,男子之通称也』。白虎通,號『子者,丈夫之通称也』。和漢暗合あり」

というように「男の通称」であるが,「女(をみな)も子と云ふこと,特に多し。女之子(メノコ),女子(ニョシ)の子(シ)なり」ともあり,男女ともに使う。「親」に対して「子」という意味で,「子」は,様々なメタファとしての意味は多い。

「子」の語源は,

「小(コ)と同源か」

とあり(広辞苑第5版),

「小の義にて,稚子(チゴ)より起れる語なるべし」

とある(大言海)。『語源由来辞典』も,

「『こまやか( 細小)』の意味とする説や、胎内で凝りて子となることから『こる(凝る)』の意味とする説、『小』の意味など諸説ある。」(http://gogen-allguide.com/ko/ko.html

とした上で,

「『小』の意味とする説が妥当である。」

とする。意味からみでも,そんなところではないか。他には,

胎内でコリ(凝)て子となるところから,コル(凝)の義(関秘録・和訓栞),
キコリ(気凝)の義(日本語原学=林甕臣),
「孩」(カイ,ガイ ちのみご)の古音(ko)から(日本語原学=与謝野寛)

等々あるが,理屈に過ぎた説は大概,無理筋と思う。意味から見ても,

小,

から来ているのだとみていい。

「コ(小さいもの)」

であり,

「子,小,粉は同源」(日本語源広辞典)

としていいとは思うが,しかし接頭語「小」は当て字,「こ」はどこから来たのか。

小石,
小鳥,
小山,

等々,「ちいさい」ことを「こ」といったということは確かだ。
なお,「小」(http://ppnetwork.seesaa.net/article/445760046.html?1557427588)については触れたことがある。

因みに,「小」(ショウ)の字は,

「象形。中心の丨線の両脇に点々をつけ,棒を削って小さく細く削ぐさまを描いたもの」

とある(漢字源)。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
前田富祺編『日本語源大辞典』 (小学館)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 03:37
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