2020年01月29日

ごまめの歯ぎしり


「ごまめの歯ぎしり」とは、

力のない者が、いたずらに苛立ったり悔しがったりすることのたとえ、

であるが、

鰯(いわし)はもともと弱い魚であるが、その上からからに干されているのだから、何もできないという意味であるhttps://imidas.jp/proverb/detail/X-02-C-10-7-0002.html

鱓(ごまめ)の歯軋りは、そんな弱い魚が歯軋りしてくやしがっている様子を言い、くやしがってもどうにもならないという意味である。ゴマメをよく見ると、目を見開き、歯をくいしばって歯ぎしりしているようにも見える(笑える国語辞典)、

等々とある。似た諺に、

家鴨(あひる)の木登り、
蟷螂の斧、

がある。「ごまめ」は、

鱓、
古女、
五万米、
五真米、

等々と当てる。

小形のカタクチイワシ(片口鰯)の乾燥品、

で、

田作、または田作り(たづくり、たつくり)、

と同一視されるが、正確には、

ごまめは田作りと同じものとして扱われているが、本来、田作りよりやや小さいものを『ごまめ』と呼んでいた、

ともある(語源由来辞典)。確かに、

小型のカタクチイワシの素干し(百科事典マイペディア)、
片口鰯(かたくちいわし)の幼魚を干したもの(由来・語源辞典)、

とある。大言海は、

鯷(ひしこ)、

としている。「鯷」(ひしこ)は、

ひしこいわし、

で、

カタクチイワシの別名、

とあるが、大言海は、「ひしこいわし」は、

鰯に似て小さく、別種なり。背は蒼黒にして、腹部は白く、度朝四寸許り、…賤民の食とす。鮮なるは味好し。多くは乾してタツクリとなす、一名セグロイワシ、

としている。主として、主として関東地方で呼んでいるらしい。多くは、カタクチイワシの別名、とするが、厳密には違うようだ。毛吹草(正保)に、

「干小鰯(ほしこいわし)、世にこれをゴマメ、又コトノバラと云ふ」(ホシコはヒシコの轉音)、

とある(大言海)。たべもの語源辞典は、

「(田作りより)小さいものを塩をつけずに干したしろぼしを『ごまめ』といい、また『ひしこ』ともいう。『ひしこ』は『ほしこ』(干小鰯)の『ほ』と『ひ』は通音なので、『ほしこ』が『ひしこ』になった。『ひしこ鰯』というのは、イワシの生魚の名称であるが、ほしこにするイワシというので名づけられた。それで、ひしこイワシを略して、ひしこと呼ぶ場合は、生魚のことになる。干したものは『ごまめ』という。」

と、説いている。

ごまめ.jpg



「ごまめ」は、小さく、弱い者の代名詞で、

ごまめの魚(とと)交じり、
ごまめでも御頭つき、

等々と諺に使われる。

田作(たづくり)、

といったのは、

昔イワシが肥料とされたため(百科事典マイペディア)、
ほしか(干鰯)同様に田畑の肥料にしたため(世界大百科事典)、
イワシは田畑の肥料として使われたことから(笑える国語辞典)、

等々とする説が多いが、

「農夫が田植のときには、最も多くこれを御馳走として。田植の祝肴として用いる」

ため(たべもの語源辞典)のようである。豊年満作を祈って農民が食べ出したというのが正確である。

「ごまめ」は、女房詞では、

ことのはら、

といった。これは、

小殿原(ことのばら)、

で,小さな殿方たちというしゃれた隠語(世界大百科事典)であるらしい。尾頭付きという意味であろうか。

「小形のカタクチイワシを水洗後、莚の上にばらまき、1日数回転がしながら干し上げる。油が少なく、体表面が銀白色に輝き、頭や尾がとれず、形が崩れていないものが良品。油焼けしたり、油のにじみ出たものは不良品である」

とされる(日本大百科全書)。

大言海は、「ごまめ」を、

「ごまめ鰯(和漢三才図絵)と云ふが、成語なり。ゴマメは細羣(こまむれ)の約にて、清音なるを、祝賀の供に、御健全(ごまめ)に言寄せて、濁音となれるならむ。春盤(ホウライ)に、小殿儕(コトのバラ)と云ふは、小さくて積むこと多き子の意なるべく、数子を、賀肴とすると、同意なるべし。田作(たつくり)と云ふは、田の肥料(こやし)とするに就きての名にて、亦、祝賀の意あり。合類節用集(元禄)『気形門、韶陽魚(コトノバラ)』(左訓「ゴマメ」)、韶陽魚は海鷂魚にて、大、小、甚だ異なり、箋注和名抄『韶陽魚、古米、下総本、古下、有萬字』、名義抄『韶陽魚、コメ、コマメ』、本草和名『鱓、魚甲、古女、一名、衣比』、常に、ゴマメに、鱓の字を用ゐるは、此の誤用なり」

とする。「ごまめ」は、

こまむれ(細小群)のむれをちぢめてめといった、

とたべもの語源辞典もいう。語源由来辞典も、

「ごまめは『こまむれ(細群)』の『むれ』が略されたもので、古くは『こまめ』と呼ばれた。『こ』が『ご』と濁音化されたのは、体が丈夫なことを意味する『まめ』(忠実)に接頭語の『ご(御)』が付いた『ごまめ(御忠実)』に言い寄せたものと思われる。」

同趣の説である。「ごまめ」は、田作りとも呼ばれるように、

「田畑の豊穣や子孫繁栄の象徴としてもありがたがられている。つまり、『縁起がいいから』」

と(笑える国語辞典)、縁起物として正月のおせち料理、祝い肴として欠かせないものとされている。しかし、それには、

「昔、天皇が貧乏になられて、頭つき一尾と献立にあっても魚を求められない時代に、頭つきの魚で一番安いゴマメ一尾を皿にのせて飾ったという故事より、お目出度い儀式に用いられる魚となった」

という異説もある(たべもの語源辞典)。

なお、「いわし」http://ppnetwork.seesaa.net/article/460405863.htmlについては、すでに触れた。

参考文献;
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)
大槻文彦『大言海』(冨山房)

ホームページ;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;
http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 05:34
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