2021年03月13日

のり


「のり」は、

海苔、

と当てる「のり」である。「海苔」は、

カイタイ、

と読む漢語である。

海の藻、

の意で、南越志に、

海藻、一名海苔、

とある(字源)。「のり」の漢名は、

紫菜(シサイ)、

といい、

水苔(スイタイ)、
海菜(カイサイ)、
石衣(セキイ)、
苔哺(タイホ)、
石髪(セキハツ)、

等々ともいう(たべもの語源辞典)、とある。日本では、古く、

紫菜、
神仙菜、

と呼ばれたhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%B7%E8%8B%94、とあるのは、漢名由来である。平安時代の字書『天治字鏡』には、

海糸藻、乃利、

とある(大言海)。「海苔」は、

nöri、

で、「糊」も、

nöri、

で、同源のようである(岩波古語辞典)。

海苔はすでに上代、縄文時代から食用にされていたが、文字として海苔が初めて登場したのは、『常陸風土記』で、

古老の曰(い)へらく、倭武の天皇 海辺に巡り幸(いでま)して乗浜(のりのはま)に行き至りましき。時に浜浦(はま)の上に多(さは)に海苔(俗(くにひと)、乃理(のり)と云ふ)を乾せりき、

とあるhttps://www.yamamoto-noriten.co.jp/knowledge/history.html。「大宝律令」(701年制定)の賦役令(ぶやくりょう)では、大和朝廷への「調」(現在の税金)の一つに、

紫菜(むらさきのり)、

があるが、「紫菜」は「凝海藻(こもるは)」(=ところてん)やその他海藻類の2倍以上の価値があった、とある(仝上)。「出雲風土記」(733年)にも、

紫菜は、楯縫(たてぬひ)の郡(こほり)、尤(もつと)も優(まさ)れり、

とあり(仝上)、延喜式(平安中期)には、志摩・出雲・石見・隠岐・土佐などから算出したとある(たべもの語源辞典)。

粗朶(ソダ 海苔をつけるための樹の枝)を立てて海苔をとり始めたのは元禄年間(1688~1704)とされる(仝上)が、これには、

江戸の漁師は毎日将軍家に鮮魚を献上しなければならず、そのため浅瀬に枝のついた竹などで生簀を作り、常に魚を用意していました。冬になるとその枝にたくさんの海苔が生えることに着目したことが海苔養殖の始まりと言われています、

とあるhttps://www.yamamoto-noriten.co.jp/knowledge/history.html。「武江年表(ぶこうねんぴょう)」には、

大森で海苔養殖が始まった、

と記されている(仝上)。享保二年(1718)に、

品川の海に初めて海苔養殖のための「ソダヒビ」が建てられました。ちなみに「ソダヒビ」とは、葉を落として枝を束ねて作った物です。しかし、この頃は海苔の胞子(種)のつき方が不明で、もっぱら経験則に基づいた養殖であったため、年によって収穫量が違い、豊作なら大金が入り、失敗すると借金が残るので、海苔は「運ぐさ」と呼ばれていた、

とある(仝上)。その後、海苔養殖は幕府の保護を受け、江戸の特産品となった。「紫海苔」を、

浅草海苔、

と呼ぶのは、品川大森辺でとった海苔を浅草で製造して売ったから、という(たべもの語源辞典)。昔は、隅田川からも海苔がとれたという(仝上)。

海苔.jpg

(海苔(広益国産考) 日本語源大辞典より)

和語「のり」の語源は、

糊と同じで、ねばったさま、ヌルヌルした状態から「のり」といった(たべもの語源辞典)
粘滑(ヌルスル)の義(大言海)、
ヌルリ、ヌリがノリに変化した(日本語源広辞典)、
「糊(のり)」と同源で、「ヌルヌル」や「ヌラヌラ」などが変化した語(語源由来辞典)、

というところだと思われる。

粘り気があるところから(国語の語根とその分類=大島正健)、
ヌル(濡)と同源の、ヌルヌルと辷る義の動詞ヌル(辷)の連用形名詞法ヌレが変化したもの(続上代特殊仮名音義=森重敏)

も同趣だと思うが、ただ「ぬる」(濡る)は、

ぬる(塗る)と同根、湯・水・涙など水分が物の表記につく意、

とあり(岩波古語辞典)、擬態語の「ぬるぬる」とは別由来と思われる。

板海苔.jpg


参考文献;
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
清水桂一『たべもの語源辞典』(東京堂出版)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:39
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