2021年09月20日

もがり


「もがり」は、

殯、

と当てる(広辞苑)。

あらき(殯・荒城)、

ともいう。日本古代の葬制で、

喪屋を造りて殯し哭く(神代紀)、
大君の命畏み大殯(あらき)の時にはあらねど雲隠ります(万葉集)、

と、

貴人の本葬をする前に、棺に死体を納めて仮にまつること、またその場所、

の意である。古代皇室の葬送儀礼では、

陵墓ができるまで続けられ、その間、高官たちが次々に遺体に向かって誄(しのびごと)をたてまつった、

とあり(百科事典マイペディア)、

殯の萌芽形態は、《魏志倭人伝》にすでに見えており、古代日本のみならず、中国南部から中部インド、メラネシア、ポリネシアなどに広く分布する複葬形式の一つと認められる、

ともある(世界大百科事典)。『隋書』「東夷 俀國」には、

死者は棺槨を以って斂(おさ)め、親賓は屍に就いて歌舞し、妻子兄弟は白布を以って服を作る。貴人は3年外に殯し、庶人は日を卜してうずむ、

とあり、また、『隋書』「東夷 高麗」(高句麗)には、

死者は屋内に於て殯し、3年を経て、吉日を択(えら)んで葬る、父母夫の喪は3年服す、

とありhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AE%AF。倭国・高句麗とも、貴人は3年間殯にした(仝上)。

これは、

近親の者が諸儀礼を尽くして幽魂を慰める習俗、

とも、

死者のよみがえりに求める、

ともあり(世界大百科事典)、殯の終了後は棺を墳墓に埋葬したので、

長い殯の期間は大規模な墳墓の整備に必要だった、

とも考えられるhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AE%AF、ともある。

あらきのみや(殯の宮)、

は、

あらきの場所を尊んでいう、

仮宮、

であるが、

もがりの宮、
あがりの宮、

ともいう。「あらき」は、また、

かりもがり(殯)、

とも言う(広辞苑)が、

仏、涅槃に入り給ひぬれば、阿難、仏の御身をかりもがりし奉りて(今昔物語集)、

と、要は、

死人を本葬する前、しばらくその死骸を棺に入れて安置すること、

である(仝上)。これは、

死者の霊を慰める、あるいは故人を偲ぶといった意味・意義のある行いである。日本古来、殯は「貴人の弔い方」として営まれてきた。現代においては、皇室でのみ(天皇、皇后の崩御した際にのみ)営まれる。現代の通夜(つや)は、殯を短縮・形式化した習わしとも言われている、

とある(実用日本語表現辞典)。

「もがり」の語源は、

喪あがりの意(広辞苑)
もあがりの略、モは凶事、アガリは崩御(カンアガリ)の義(无火殯斂(ほなしあがり)のアガリと同じ(大言海)、
もあがり(喪上)の約、アガリはカムアガリのアガリで、貴人の死を言う(岩波古語辞典)、
モ(喪)+アガリ(神上り、崩御)(日本語源広辞典)、

が大勢の説だが、

モバカリ(喪許)の義(和訓栞・言葉の根しらべの=鈴木潔子)、
カリモ(仮喪)の倒置(上代葬儀の精神=折口信夫)、

等々もある。しかし、

もあがり、

でよさそうである。因みに、无火殯斂(ほなしあがり)とは、

竊かに天皇の屍を収めて…豊浦宮に殯(もがり)して、无火殯斂〈无火殯斂、此をば褒那之阿餓利(ホナシアガリ)と謂ふ〉を為(書紀(720)仲哀九年二月)、

というように、

死を秘するために、灯火をたかないで殯(もがり)をすること、

とある(精選版日本国語大辞典)。

「あらき」は、

アラはアライミ(粗忌)のアラと同根。略式の意。キは棺(岩波古語辞典)、
ウラキ(新棺)の義。キはオクツキ(奥城)の意。説文「殯、死在棺、将遷葬柩、賓遇之」(大日本国語辞典・大言海・日本古語大辞典=松岡静雄・日本語源=賀茂百樹)、
アラカキ(荒籬)の略(万葉考・松屋筆記)、

等々の諸説あるが、「仮」の意味で、「アラ」は、荒・粗なのではないか。

「殯」 漢字.gif


「殯」(ヒン)は、

会意兼形声。「歹(死体)+音符賓(ヒン お客、側にいる相手)で、死体のそばにいる客として、しばらく身辺に安置すること、

とある(漢字源)。やはり、

於我殯(論語)、

と、

埋葬する前に、しばらくの間死体を棺に納めたまま安置する、

意である。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
前田富祺編『日本語源大辞典』(小学館)

ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

posted by Toshi at 04:17
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