寸(き)

いく木ともえこそ見わかね秋山のもみぢの錦よそにたてれば(忠岑) の、 いく木、 は、 幾寸(き)、 を掛ける。 寸(き)、 は、 古代の長さの単位で、寸(すん)に相当する、 とし(水垣久訳注『後撰和歌集』)、 幾本の木とも(また幾寸の織物とも)、とても見分けることができない、 と訳す(仝上)。 寸(き)、 は、 …

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うちはへて

うちはへてかげとぞたのむ峯の松色どる秋の風にうつるな(後撰和歌集) の、 うちはへて、 は、 長く続けて、 の意で、 いつまでも、 と訳す(水垣久訳注『後撰和歌集』)。 うちはへて思ひし小野は間近きその里人さどひとの標結(しめゆ)ふと聞きてし日より立てらくのたづきも知らず居(を)らくの奥処(おくか)も知らに(万葉集) では、 うちは…

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頭(つめ)

大橋の頭(つめ)に家あらばま悲しくひとり行く子にやど貸さましを(万葉集) の、 ま悲しく、 は、 見た目に悲しそうに、 の意とし、 「ま愛(かな)し」の意こもるか、 と解して、 わびしげに、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 頭、 の字を当てて、 つめ、 と訓ませているのは、 たもと、 の意とある(…

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山藍(やまあゐ)

大橋の上(うへ)ゆ紅(くれなゐ)の赤裳裾引(あかもすそび)き山藍(やまあゐ)もち摺れる衣(きぬ)着てただひとりい渡らす児は若草の夫(つま)かあるらむ橿(かし)の実のひとりか寝(ぬ)らむ問はまくの欲(ほ)しき我妹(わぎも)が家の知らなく(万葉集) の、 紅(くれなゐ)の、 は、 紅色に染めた、 の意、 山藍(やまあゐ)、 は、 トウダイグサ科の多…

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しなでる

しなでる片足羽川(かたしはがわ)のさ丹塗(にぬ)りの大橋の上(うへ)ゆ紅(くれなゐ)の赤裳(あかも)裾引(すそび)き山藍(やまあゐ)もち摺れる衣(きぬ)着てただひとりい渡らす子は(万葉集) の、 しなでる、 は、 「片足羽川」(かたしはがわ)の枕詞。葉が層を成して照る葛(かた)の意、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 片足羽川、 は、 大和…

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ゆなゆな

若くありし肌も皺(しわ)みぬ黒くありし髪も白(しら)けぬゆなゆなは息さへ絶えて後(のち)つひに命(いのち)死にける(万葉集) の、 ゆなゆな、 は、 あげくのはてには、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 ゆなゆな、 は、万葉仮名で、 由奈由奈(ユナユナ)、 とあてている(精選版日本国語大辞典)が、 ユは「ゆり(後)」のユ、ナは「…

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足摺り

玉櫛笥(たまくしげ)少し開くに白雲(しらくも)の箱より出でて常世辺(とこよへ)にたなびきぬれば立ち走り叫び袖振り臥(こ)いまろび足ずりしつつたちまちに心消失せぬ(万葉集) の、 臥(こ)いまろび、 は、 ころげ廻り地団駄踏んで、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 臥(こ)いまろぶ、 で触れたように、 臥(こ)いまろび、 の、 臥…

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とをらふ

春の日の霞(かす)める時に住吉(すみのえ)の岸に出(い)で居(ゐ)て釣舟のとをらふ見ればいにしへのことぞ思ほゆる(万葉集) の、 とをらふ、 は、 波のまにまに揺れる、 意とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 とを、 は、 タワの転、 とあり(広辞苑)、 揺れ動く、 揺れる、 意である(仝上)。で、 とをらふ、 …

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たはる

さし並ぶ隣の君はあらかじめ己妻(おのづま)離(まか)れて乞(こ)はなくに鍵さへ奉(まつ)る人皆(ひとみな)のかく惑(まと)へればたちしなひ寄りてぞ妹(いも)はたはれてありける(萬葉集) の、 鍵、 とは、 財産を収める櫃の鍵、 とあり(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 たちしなふ、 は、 立ち撓ふ、 とあて、 しなやかに立つ、 なよや…

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胸別(むなわ)け

しなが鳥安房に継(つ)ぎたる梓弓(あづさゆみ)周淮(すゑ)の珠名(たまな)は胸別(むなわ)けの広き我妹(わぎも)腰細(こしぼその)のすがる娘子(をとめ)のその姿(なり)の(万葉集)、 の、 周淮(すゑ)の珠名娘子(をとめ)、 は、 土地の美女の名。伝説的女性らしい、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。似た伝承の、下総の、 真間手児奈(真野手児名 ままのて…

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かくしもがも

我(わ)が畳(たたみ)三重の川原の磯の裏にかくしもがもと鳴くかはづかも(伊保麻呂) の、 我が疊、 は、 三重の枕詞、 で、 三重敷く意、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 畳を何枚も重ねて用いる意で、地名「三重(みへ)」にかかる、 である(精選版日本国語大辞典)。 かくしもがもと、 は、 いつまでもこうしていたいと…

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駒迎へ

秋霧の立野(たつの)の駒を引く時は心にのりて君ぞこひしき(藤原忠房) の詞書(和歌や俳句の前書き)に、 兼輔朝臣左近少将に侍りける時、武蔵の御馬むかへにまかり立つ日、俄にさはる事ありて、……、 とある、 御馬むかへ、 は、 駒迎へ、 のことで、 毎年八月十五日、諸国から献上される馬を逢坂の関まで迎えに行く行事、 をいう(水垣久訳注『後撰和…

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かりがね

かりがねの鳴きつるなへに唐衣(からころも)立田の山はもみぢしにけり(後撰和歌集) の、 なへに、 は、奥義抄(1135~44頃)に、 なへ、からになと云ふ心也、 とある。この「からに」は、 「と」「たちまち」、 などの意をいうものであろう(精選版日本国語大辞典)とある。 なへに、 は、 接続助詞「なへ」に格助詞「に」の付いたもの、 …

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御食(みけ)

御食(みけ)向ふ南淵山(みなぶちやま)の巌(いはほ)には降りしはだれか消え残りたる(万葉集) の、 はだれ、 は、 (雪などが)うっすらと積る状態、 をいい、 御食向ふ、 は、 南淵山の枕詞、 で、 貴人の御食に向う蜷(みな)の意か、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 あじさはふ、 で触れたように、 御食…

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片待つ

雲隠(くもがく)り雁鳴く時は秋山の黄葉(もみぢ)片待(きかたま)つ時は過ぐとも(万葉集) の、 片待つ、 は、 「片」は心が一方に寄る、 意で、 ひたすら待ち遠しい、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 時は過ぐとも、 は、 雁の季節は過ぎ去っても、 意で、 雁以上に黄葉を期待する心、 とある(仝上)。また、 …

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間使(まつかひ)

あぶり干す人もあれやも家人(いへびと)の春雨すらを間使(まつかひ)にする(万葉集) の、 間使、 は、 二人の間を往復する使い、 を言い、 春雨すらを間使(まつかひ)にする、 は、 春雨まで使いによこして監視するとは何事か、 の意とする(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 間使(まつかひ)、 は、 なのりそのおのが名惜しみ間使…

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栲領巾(たくひれ)

栲領巾(たくひれ)の鷺坂山(さぎさかやま)の白(しら)つつじ我れににほはに妹(いも)に示さむ(万葉集) の、 栲領巾(たくひれ)、 は、 鷺坂山の枕詞、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 我れににほはに、 は、 私に染めつけておくれ、 と訳す(仝上)。 栲領巾(たくひれ)、 は、 楮(こうぞ)などの繊維で織った栲布(…

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ありきぬ

あり衣(きぬ)のへつきて漕(こ)がに杏人(からたち)の浜を過ぐれば恋(こひ)しくありなり(万葉集) の、 あり衣の、 は、 「へつきて」の枕詞、 で、 高級な絹の着物が身にまといつく意、 とあり(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 あり衣、 は、 絹の衣、 としている(仝上)。 漕(こ)がに、 の、 に、 は…

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裘(かはごろも)

とこしへに夏冬行けや裘(かはごろも)扇(あふき)放たぬ山に住む人(万葉集) の、 裘、 は、 毛皮で作った防寒用の衣、 をいい、 かわぎぬ、 けごろも、 ともいう。 別に、 悉多達多(シッタルタ)すなわち釈尊が入山の時、鹿皮の衣を着た、 という故事に基づき、 かは衣山ふかくおこなふ道のかは衣よものかせぎもきてなれにけり(「藻…

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ながらふ

沫雪(あわゆき)の消(け)ぬべきものを今までに流らへぬるは妹に逢はむとぞ(大伴田村大嬢) の、 流らへぬる、 の、 流らふ、 は、 「流る」の継続態、 とあり、 雪の縁語である、 とし、 生き長らえて来たのは、 の意とする(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 ながらふ、 は、 流らふ、 とあて、 へ/へ…

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