還饗(かへりあるじ)

女郎花(をみなへし)はなの名ならぬ物ならば何かは君がかざしにもせむ(三条定方) の詞書(ことばがき 和歌や俳句の前書き)で、 相撲(すまひ)の還饗(かへりあるじ)の暮つかた、女郎花を折りて敦慶(あつよし)の親王のかざしにさすとて、 とある、 相撲(すまひ)の還饗(かへりあるじ)、 は、 相撲の節会(陰暦七月下旬におこなわ れた宮中の年中行事)で、勝った方の…

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代(しろ)

たな霧らひ雪も降らぬか梅の花咲かぬが代(しろ)にそへてだに見む(安倍奥道) の、 たな霧らふ、 は、 すっかりかき曇って、 の意で、 空一面にかき曇って、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 そへてだに見む、 の、 そふ、 は、 よそふ、 に同じで、 準える、 とし、 (梅の花が咲かない代わりに…

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たなぎらふ

たな霧らひ雪も降らぬか梅の花咲かぬが代(しろ)にそへてだに見む(安倍奥道) の、 そへてだに見む、 の、 そふ、 は、 よそふ、 に同じで、 準える、 とし、 (梅の花が咲かない代わりに)せめてそれを梅の花とでも思って見ように、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)が、 よそふ、 で触れたように、 物の本質や根…

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ほどろほどろに

沫雪(あわゆき)の保杼呂保杼呂尓(ホドロホドロニ)に降り敷けば奈良の都し思ほゆるかも(大伴旅人)、 の、 沫雪(あわゆき)、 は、 白く細かい泡のような雪、 の意で、 ほどろほどろに、 は、 雪などが薄く降り積もるさま、 をいい、 ほどろ、 は、 はだら、 はだれ、 ともいう(伊藤博訳注『新版万葉集』)とある。 …

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肆宴(とよのあかり)

あをによし奈良の山なる黒木もち造れる室(むろ)は座(ま)せど飽(あ)かぬかも(元正天皇) の詞書(ことばがき 和歌や俳句の前書きで、万葉集のように、漢文で書かれた場合、題詞(だいし)という)に、 左大臣長屋王(ながやのおほきみ)が佐保の宅(いへ)に御在(いま)して肆宴(とよのあかり)したまふときの御製、 とある、 肆宴(とよのあかり)、 は、 天皇の饗宴、…

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逆葺(さかふ)き

はだすすき尾花逆葺(さかふ)き黒木もち造れる室(むろ)は万代(よろづよ)までに(元正天皇) の、 はだすすき、 は、 穂の出ないすすき、 をいい、 穂の出たすすき、 を、 尾花、 という(伊藤博訳注『新版万葉集』)とある。 逆葺(さかふ)き、 は、 すすきの先を下に向けて葺くことをいう。普通は根を下に向ける、 とあ…

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真神(まかみ)

大口(おほくち)の真神(まかみ)の原に降る雪はいたくな降りそ家もあらなくに(舎人娘子) の、 大口の、 は、 「真神」の枕詞、 で、 真神(狼)の口が大きい、 意からである(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 真神の原、 は、 明日香村飛鳥寺一帯の原、 を指す(仝上)。 真神、 を、 オオカミ、 とするのは、…

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誂(あとら)ふ

衣手に水渋(みしぶ)付くまで植ゑし田を引板(ひきた)我が延(は)へまもれるくるし(万葉集) の、 詞書(和歌や俳句の前書きで、万葉集のように、漢文で書かれた場合、題詞(だいし)という)に、 尼、頭句を作り、併せて大伴宿禰家持、尼に誂(あとら)へて末句を継ぎ、等しく和(こたふ)る歌一首、 とある。 水渋、 は、 水の垢、 引板延へ、 は、 …

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手もすまに

戯奴(変して「わけ」といふ)がため我が手もすまに春の野に抜ける茅花(つばな)ぞ食(め)して肥(こ)えませ(紀郎女)、 手もすまに植ゑし萩にやかへりては見れども飽かず心尽さむ(読人知らず) の、 手もすまに、 の、 「すま」は休む意か。ニは打消、 として、 我が手も休めずに、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 手もすまに、 は、 …

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かほばな

石橋(いしばし)の間々(まま)に生(お)ひたるかほ花(ばな)の花にしありけりありつつ見れば(万葉集) の、 石橋、 は、いわゆる、 川の中の踏み石、 石(いし)並み、 飛び石、 あるいは、 澤飛(さはとび)、 磯飛(いそとび)、 のことで(精選版日本国語大辞典・大言海)、 石橋の間々(まま)に、 の、 川の飛石の間々に、 …

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山鳥

あしひきの山鳥(やまどり)こそば峰向ひに妻どひすといへうつせみの人なる我れや何(なに)すとか一日一夜(ひとひひとよ)も離(さか)り居て嘆き恋ふらむ(大伴家持) の、 山鳥、 は、 キジ科の一種、 をいい、 雌雄別居し雄は峰を越えて妻問うとされたらしい、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 (ヤマドリ https://ja.wikipedi…

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かへるて

我がやどにもみつかへるて見るごとに妹を懸(か)けつつ恋ひぬ日はなし(大伴田村大嬢) の、 かへるて、 は、 かえで、 のこと、 葉が蛙の手に似る、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 (カエデの葉 デジタル大辞泉より) かへるて、 は、 蝦手、 蛙手、 鶏冠木、 とあて、後に、 かへるで、 と濁るが、 …

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だみ

我がやどの萩(はぎ)花咲けり見に来ませいま二日だみあらば散りなむ(巫部(かむなぎべの)麻蘇娘子(まそをとめ)) の、 二日だみ、 の、 だみ、 は、 二日ばかり、 二日だみあらば、 は、 二日ほどしたら、 と訳される(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 だみ、 は、 たむ(廻)の名詞形、「そのめぐり」「一帯」の意から、「…

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た廻(もとほ)る

雲の上(うへ)に鳴くなる雁(かり)の遠けども君に逢はむとた廻(もとほ)り来(き)つ(万葉集) の、 た廻(もとほ)り来(き)つ、 は、 遠路はるばるやってきた、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 匍(は)ひた廻(もとほ)る、 で触れたように、 た廻(もとほ)る、 は、 ら/り/る/る/れ/れ、 の、自動詞ラ行四段活用で、 …

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いやし

秋の雨に濡れつつ居(を)ればいやしけど我妹がやどし思ほゆるかも(大伴利上) の、 いやし、 は、 むさくるしいけれど、 とする(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 いやし、 は、 卑し、 賤し、 鄙し、 とあて(精選版日本国語大辞典)、 (しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ、 の、形容詞シク活用で、現…

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もが

我がやどの尾花(をばな)が上の白露(しらつゆ)を消(け)たずて玉に貫(ぬ)くものにもが(大伴家持) の、 もが、 は、 手段への願望、 とあり、 貫(ぬ)くものにもが、 は、 糸に通せたらよいのに、そしたらあの子にそのまま贈ることができように、 と注釈する(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 もが、 は、 係助詞「も」に終…

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射目(いめ)

射目(いめ)立てて跡見(とみ)の岡辺(おかへ)のなでしこの花 ふさ手折り我れは持ちて行く奈良人(ならひと)のため(紀鹿人) の、 ふさ手折り、 は、 ふさふさと折りとって、 の意とし、 射目(いめ) は、 「跡見」の枕詞、 で、 鳥獣を射るために隠れる場所、 で、 射目を設けて獣の足跡を見る、 意とある(伊藤博訳注…

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あふさわに

さを鹿の萩に貫(ぬ)き置ける露の白玉 あふさわに誰(た)れの人かも手に巻かむちふ(藤原八束) の、 あふさわに、 は、 たやすく、 軽はずみに、 の意とし(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 萩の枝の露を鹿が妻のために貫いた飾玉と見たもの、 と注釈し(仝上)、 あふさわに誰れの人かも手に巻かむちふ、 を、 それをまあ軽はずみに、どこのど…

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つくめ

妹がりと我が行く道の川しあればつくめ結ぶと夜ぞ更けにける(市原王) の、 妹がりと、 は、 妻の許(もと)に行こうと、 と訳され、 つくめ結ぶと、 は、 舟出の準備をするとて、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)が、 つくめ、 は、 櫓の穴(へそ)をかぶせる舷の突起、 とある(仝上)。 がり、 は、 …

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夜のほどろ

秋の田の穂田(ほだ)を雁(かり)がね暗(くら)けくに夜のほどろにも鳴き渡るかも(聖武天皇) の、 暗(くら)けくに、 は、 まだ暗いのに、 の意、 夜のほどろ は、 夜の闇の白み始める頃、 の意とあり、 「ほどろ」は、密なるものが次第に粗になるさま、 とあり(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 夜のほどろにも鳴き渡るかも、 …

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