およづれ

たはことかおよづれことかこもりくの泊瀬の山に廬(いほ)りせりといふ(万葉集) の、 たはことかおよづれことか、 は、 狂言なのか惑わし言なのか、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 たはこと、 は、 戯言、 とあて、古くは清音で、後に、 たはごと、 と、濁音化、 たわけたことば、 妄語、 の意で、 およづ…

続きを読む

年のわたり

契りけむ言の葉今はかへしてむ年のわたりによりぬるものを(後撰和歌集) の、 年のわたり、 は、 年に一度の来訪、 をいい、 年に一度も逢いに来ないとして、(七夕の)二星に誓った愛の言葉をお返ししよう、 という意味と注釈する(水垣久訳注『後撰和歌集』)。 年のわたり、 は、 年の渡り、 とあて、 玉葛(たまかづら)絶えぬも…

続きを読む

しるし

秋の夜の心もしるくたなばたのあへる今夜(こよひ)は明けずもあらなむ(後撰和歌集) の、 心もしるく、 は、 「心」は長いという秋の夜の持つ意味であり、また思いやり・情けでもあろう、 と解し、 長いという真意もはっきりあらわれて、 と訳されている(水垣久訳注『後撰和歌集』)。 しるし、 は、 著し、 とあて、 (く)・から…

続きを読む

ほとほとし

御幣(みぬさ)取り三輪の祝(はふり)が斎(いは)ふ杉原薪伐(たきぎこ)りほとほとしくに手斧(てをの)取らえぬ(万葉集) の、 三輪の祝、 の、 祝(はふり)、 は、 三輪の社の神職、 の意だが、 女の夫の譬え、 とし(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 斎(いは)ふ杉原、 は、 妻の譬え、 としているが、 上三句は…

続きを読む

まもらふ

伏越(ふしこえ)ゆ行かましものをまもらふにうち濡らさえぬ波数(よ)まずして(万葉集) の、 伏越、 は、 這って越えるような難所の意か、 として、 険しい通い路の譬え、 とし(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 まもらふ、 は、 波の様子を見守っているうちに、 の意だが、 ぐずぐずしているうちに人に知られた、 の含意、 …

続きを読む

しじ貫く

大船(おほぶね)に真楫(まかぢ)しじ貫き漕(こ)ぎ出(で)なば沖は深けむ潮は干(ひ)ぬとも(万葉集) の、 漕(こ)ぎ出(で)なば、 は、 交際に踏み切ることの譬え、 とし(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 沖は深けむ、 は、 将来二人の仲は深まろう、 の意(仝上)、 干ぬ、 は周囲の情勢が悪化することの譬え、 と注釈する(…

続きを読む

真鉋(まかな)

真鉋(まかな)持ち弓削(ゆげ)の川原の埋(うも)れ木のあらはるましじきことにあらなくに(万葉集) の、 真鉋、 は、 「弓削」の枕詞、 で、 かんなで弓材を削る意、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)が、 鉋(かんな)で弓材を削るところから、同音の地名「弓削(ゆげ)」にかかる、 意である(精選版日本国語大辞典)。 埋もれ木、 …

続きを読む

さ丹付(につ)く

大和の宇陀の真赤土(まはに)のさ丹付(につ)かばそこもか人の我(わ)を言(こと)なさむ(万葉集) の、 真赤土、 の、 真、 は、 完全を示す接頭語、 赤土、 は、詞書(和歌や俳句の前書きで、万葉集のように、漢文で書かれた場合、題詞(だいし)という)の、 埴(はに)に寄す の、 埴、 と同じで、 顔料に用いる赭土、…

続きを読む

にはたつみ

はなはだも降らぬ雨故(あめゆゑ)にはたつみいたくな行きそ人の知るべく(万葉集) の、 はなはだも降らぬ雨、 は、 それほど足繁く通ったわけでもないのに、 の意を譬える(伊藤博訳注『新版万葉集』)とあり、 にはたつみ、 は、 庭の水溜まり、 の意で、 男の譬え、 とし、 そうたいして降らぬ雨なのに、庭の水溜まりよ、勢いよく…

続きを読む

言問ひ

春日野(かすがの)に咲きたる萩は片枝(かたえだ)はいまだふふめり言(こと)な絶えそね(万葉集) の、 片枝(かたえだ)はいまだふふめり、 は、 末娘が未婚のままでいる、 意(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 言(こと)な絶えそね、 は、親の立場から、 花の状態に対する言問いを絶やさないでほしい、 意とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 …

続きを読む

山ぢさ

息の緒に思へる我れを山ぢさの花にか君がうつろひぬらむ(万葉集) の、 山ぢさの花にか、 を、 しぼみやすいえごの木の花のように、 と注釈し、 山ぢさのあだ花になってしぼんでしまったのでしょうか、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 息の緒(いきのお)、 は、 息が長く続くのを緒にたとえた表現、 で、万葉集では、 息の緒…

続きを読む

業(な)る

たらちねの母がその業(な)る桑(くは)すらに願へば衣(きぬ)に着るといふものを(万葉集) の、 業(な)る、 は、 生業(なりわい)として育てている、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 業(な)る、 は、 ら/り/る/る/れ/れ、 の、自動詞ラ行四段活用で、 生業とする、 生産する、 営む、 といった意味である(学研全…

続きを読む

いささめに

真木柱(まきはしら)作る杣人(そまびと)いささめに仮廬(かりいほ)のためと作りけめやも(万葉集) の、 真木柱(まきはしら)作る杣人、 は、 杉や檜の柱を造る木樵、 をいい(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 正式に結婚を申し込もうとする男の譬え、 とある(仝上)。 真木、 で触れたように、 真木、 の、 ま、 は、 …

続きを読む

白菅(しらすげ)

いざ子ども大和へ早く白菅(しらすげ)の真野の榛原(はりはら)手折(たを)りて行かむ(高市黒人) 白菅(しらすげ)の真野(まの)の榛原心ゆも思はぬ我(わ)れし衣(ころも)に摺りつ(よみ人知らず) の、 白菅、 は、 菅の一種、 とあり(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 真野の代表的景物を枕詞のように使った、 とする(仝上)。 前者の、 いざ子…

続きを読む

真鳥

真鳥(まとり)棲む雲梯(うなて)の社の菅(すが)の根を衣(きぬ)にかき付け着せむ子もがも(万葉集) の、 雲梯(うなて)の社、 は、 橿原市雲梯町の神社、 とあり(伊藤博訳注『新版万葉集』)、『万葉集』では、 卯名手、 と記され、和名類聚抄(931~38年)の、 高市郡雲梯郷、 に比定される(日本大百科全書)とある。 真鳥、 …

続きを読む

つちはり

我がやどに生(お)ふるつちはり心ゆも思はぬ人の衣(きぬ)に摺(す)らゆな(万葉集) の、 つちはり、 は、 つくばね草か、 とあり、 我が娘の譬え、 とする(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 つちはり、 は、 土針、 とあて(岩波古語辞典・精選版日本国語大辞典・広辞苑)、 土孫、 とあてるとするものもある(大言海)。和…

続きを読む

いたも

思ひあまりいたもすべなみ玉たすき畝傍(うねび)の山に我(わ)れ標(しめ)結(ゆ)ひつ(万葉集) の、 思ひあまり、 は、 思い余ったあげく、 とあり、 いたもすべなみ、 は、 何とも致し方がなくて、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 すべなみ、 は、 すべをなみ、 で触れたように、 どうにもしようがないの…

続きを読む

いとどしく物思ふ宿の荻の葉に秋とつげつる風のわびしさ(後撰和歌集) の、 荻、 は、 イネ科の多年草。夏から秋にかけて上葉を高く伸ばし、秋風にいちはやく反応する葉擦れの音は、秋の到来を告げる風物とされた、 とし、 「秋」に「飽き」を掛け、男の来訪がないことを暗示する、 と注釈する(後撰和歌集)。 (「荻」 https://ja.wikipe…

続きを読む

いとどし

いとどしく物思ふ宿の荻の葉に秋とつげつる風のわびしさ(後撰和歌集) の、 いとどし、 は、 ただでさえひどく、 と訳す(水垣久訳注『後撰和歌集』)。 いとどし、 は、 深甚、 甚速、 とあてるとするものもある(大言海)が、 副詞「いとど」の形容詞化(デジタル大辞泉・精選版日本国語大辞典)、 イトドの形容詞形、ある状態に同じ状態が…

続きを読む

夏ばらへ

かも川の水底(みなそこ)すみて照る月を行きて見むとや夏ばらへする(後撰和歌集) の詞書(和歌や俳句の前書き)に、 みな月ばらへしに河原にまかりいでて、月のあかきを見て、 とあり、 夏ばらへ、 は、 みな月ばらへ、 の謂いで、 六月祓(みなつきばらえ)は六月晦日にする大祓(おおはらえ)を指すことも多いが、ここは月を見たというので、晦日以外にした祓…

続きを読む