朝月夜(あさづくよ)

秋萩の妻をまかむと朝月夜(あさづくよ)明けまく惜しみあしひきの山彦響(とよ)め呼び立て鳴くも(万葉集) の、 秋萩、 は、 萩の花、 のことで、 秋に花が咲くのでいう、 とある(精選版日本国語大辞典)が、 萩の初花を妻問うために。萩は鹿の妻とされた、 とも、 共寝の時に萩の花をしとねとすることから、萩は雄鹿の妻とされる、 とも…

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めぐし

この山をうしはく神の昔より禁(いさ)めぬわざぞ今日のみはめぐしもな見そ事もとがむな(万葉集) の、 うしはく神、 は、 支配する神、 めぐし、 は、 いとおしくかわいいものだ、 の意、 めぐしもな見そ、 で、 女に対して哀れとみるな、 と訳し、 事もとがむな、 を、 男に対して目くじらを立てるな、 …

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うしはく

この山をうしはく神の昔より禁(いさ)めぬわざぞ今日(けぬ)のみはめぐしもな見そ事もとがむな(万葉集) の、 うしはく神、 は、 支配する神、 めぐし、 は、 いとおしくかわいいものだ、 の意、 めぐしもな見そ、 で、 女に対して哀れとみるな、 と訳し、 事もとがむな、 を、 男に対して目くじらを立てるな…

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嬥歌(かが)ふ

鷲の棲む筑波の山の裳羽服津(もはきつ)のその津の上(うへ)に率(あども)ひて娘子(をとめ)壮士(をとこ)行き集(つど)ひかがふ嬥歌(かがひ)に(万葉集) の、 率(あども)ひて、 は、 声掛け誘い合わせて、 の意(「率(あども)ふ」は触れた)、 嬥歌(かがひ)、 は、この歌の詞書(和歌や俳句の前書き)に、 筑波嶺に登りて嬥歌会(かがひ)を為(す…

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かき霧(き)らす

かき霧らし雨の降る夜をほととぎす鳴きて行くなりあはれその鳥(万葉集) の、 かき霧らす、 は、 神が急に空をかき曇らせて雨の降る夜であるのに、 という含意で、 空かき曇って、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 かき霧らす、 は、 掻き霧らす、 とあて、 かき(掻き)、 は接頭語、 一面に曇らせる、 …

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ちはふ

男神(ひこかみ)も許したまひ女神(ひめかみ)もちはひたまひて時となく雲居(くもゐ)雨降る筑波嶺(つくはね)をさやに照らしていふかりし国のまほらをつばらかに示したまへば(万葉集) の、 ちはひたまひて、 は、 霊力を現わしてくださって、 とし、 時となく雲居(くもゐ)雨降る筑波嶺(つくはね)を、 は、 いつもは時を定めず雲がかかり雨の降るこの筑波…

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かざまつり

君が見むその日までには山おろしの風な吹きそと打ち越えて名に負へる社(もり)に風祭(かざまつり)せな(万葉集) の、 名に負へる社、 は、 風の神として聞える竜田の社、 の意、 風祭(かざまつり・かぜまつり)、 は、 風の災いを防ぐための祭り、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 (龍田大社 https://ja.wikiped…

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翼霧(はねき)る

埼玉(さきたま)の小埼(をさき)の沼に鴨ぞ翼霧(はねき)るおのが尾に降り置ける霜を掃(はら)ふとにあらし(万葉集) の、 翼霧る、 は、 羽ばたきしてしぶきを散らす、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 あらし、 は、 有らし、 とあて(精選版日本国語大辞典)、 動詞「あり」に推量の助動詞「らし」の付いた「あるらし」の音変化、 …

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寸(き)

いく木ともえこそ見わかね秋山のもみぢの錦よそにたてれば(忠岑) の、 いく木、 は、 幾寸(き)、 を掛ける。 寸(き)、 は、 古代の長さの単位で、寸(すん)に相当する、 とし(水垣久訳注『後撰和歌集』)、 幾本の木とも(また幾寸の織物とも)、とても見分けることができない、 と訳す(仝上)。 寸(き)、 は、 …

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うちはへて

うちはへてかげとぞたのむ峯の松色どる秋の風にうつるな(後撰和歌集) の、 うちはへて、 は、 長く続けて、 の意で、 いつまでも、 と訳す(水垣久訳注『後撰和歌集』)。 うちはへて思ひし小野は間近きその里人さどひとの標結(しめゆ)ふと聞きてし日より立てらくのたづきも知らず居(を)らくの奥処(おくか)も知らに(万葉集) では、 うちは…

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頭(つめ)

大橋の頭(つめ)に家あらばま悲しくひとり行く子にやど貸さましを(万葉集) の、 ま悲しく、 は、 見た目に悲しそうに、 の意とし、 「ま愛(かな)し」の意こもるか、 と解して、 わびしげに、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 頭、 の字を当てて、 つめ、 と訓ませているのは、 たもと、 の意とある(…

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山藍(やまあゐ)

大橋の上(うへ)ゆ紅(くれなゐ)の赤裳裾引(あかもすそび)き山藍(やまあゐ)もち摺れる衣(きぬ)着てただひとりい渡らす児は若草の夫(つま)かあるらむ橿(かし)の実のひとりか寝(ぬ)らむ問はまくの欲(ほ)しき我妹(わぎも)が家の知らなく(万葉集) の、 紅(くれなゐ)の、 は、 紅色に染めた、 の意、 山藍(やまあゐ)、 は、 トウダイグサ科の多…

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しなでる

しなでる片足羽川(かたしはがわ)のさ丹塗(にぬ)りの大橋の上(うへ)ゆ紅(くれなゐ)の赤裳(あかも)裾引(すそび)き山藍(やまあゐ)もち摺れる衣(きぬ)着てただひとりい渡らす子は(万葉集) の、 しなでる、 は、 「片足羽川」(かたしはがわ)の枕詞。葉が層を成して照る葛(かた)の意、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 片足羽川、 は、 大和…

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ゆなゆな

若くありし肌も皺(しわ)みぬ黒くありし髪も白(しら)けぬゆなゆなは息さへ絶えて後(のち)つひに命(いのち)死にける(万葉集) の、 ゆなゆな、 は、 あげくのはてには、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 ゆなゆな、 は、万葉仮名で、 由奈由奈(ユナユナ)、 とあてている(精選版日本国語大辞典)が、 ユは「ゆり(後)」のユ、ナは「…

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足摺り

玉櫛笥(たまくしげ)少し開くに白雲(しらくも)の箱より出でて常世辺(とこよへ)にたなびきぬれば立ち走り叫び袖振り臥(こ)いまろび足ずりしつつたちまちに心消失せぬ(万葉集) の、 臥(こ)いまろび、 は、 ころげ廻り地団駄踏んで、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 臥(こ)いまろぶ、 で触れたように、 臥(こ)いまろび、 の、 臥…

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とをらふ

春の日の霞(かす)める時に住吉(すみのえ)の岸に出(い)で居(ゐ)て釣舟のとをらふ見ればいにしへのことぞ思ほゆる(万葉集) の、 とをらふ、 は、 波のまにまに揺れる、 意とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 とを、 は、 タワの転、 とあり(広辞苑)、 揺れ動く、 揺れる、 意である(仝上)。で、 とをらふ、 …

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たはる

さし並ぶ隣の君はあらかじめ己妻(おのづま)離(まか)れて乞(こ)はなくに鍵さへ奉(まつ)る人皆(ひとみな)のかく惑(まと)へればたちしなひ寄りてぞ妹(いも)はたはれてありける(萬葉集) の、 鍵、 とは、 財産を収める櫃の鍵、 とあり(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 たちしなふ、 は、 立ち撓ふ、 とあて、 しなやかに立つ、 なよや…

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胸別(むなわ)け

しなが鳥安房に継(つ)ぎたる梓弓(あづさゆみ)周淮(すゑ)の珠名(たまな)は胸別(むなわ)けの広き我妹(わぎも)腰細(こしぼその)のすがる娘子(をとめ)のその姿(なり)の(万葉集)、 の、 周淮(すゑ)の珠名娘子(をとめ)、 は、 土地の美女の名。伝説的女性らしい、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。似た伝承の、下総の、 真間手児奈(真野手児名 ままのて…

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かくしもがも

我(わ)が畳(たたみ)三重の川原の磯の裏にかくしもがもと鳴くかはづかも(伊保麻呂) の、 我が疊、 は、 三重の枕詞、 で、 三重敷く意、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 畳を何枚も重ねて用いる意で、地名「三重(みへ)」にかかる、 である(精選版日本国語大辞典)。 かくしもがもと、 は、 いつまでもこうしていたいと…

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駒迎へ

秋霧の立野(たつの)の駒を引く時は心にのりて君ぞこひしき(藤原忠房) の詞書(和歌や俳句の前書き)に、 兼輔朝臣左近少将に侍りける時、武蔵の御馬むかへにまかり立つ日、俄にさはる事ありて、……、 とある、 御馬むかへ、 は、 駒迎へ、 のことで、 毎年八月十五日、諸国から献上される馬を逢坂の関まで迎えに行く行事、 をいう(水垣久訳注『後撰和…

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