のほほん
「のほほん」は,どの辞書をみても,
何もしないで,または気を使わないでのんきにしているさま。
とか
物事にこだわらずのんびりとしていること,また,そのような人,
とか
他に無頓着で平然としているさま,
といった意味が載る。どちらかというと,よそから見て,批判的な目線で,例えば,『大言海』だと,
「恥を感ぜぬこと,またそのもの,のんきもの」
とあけすけである。語源は,予想されるように,
擬態語,
で,
「なにもしないでいる状態の副詞(擬態語)」
とあり,
「ノホは鋸で,木挽きが大木を切る時の様子を,何もしないでのんきだと見たのでしょう」
と,暢気な謂れが出ている。ちょっと眉唾な気がするが,真偽はわからない。ただ,『広辞苑』には,
江戸時代の俗謡の囃子詞,
と出ている。で,気になって調べたが,『江戸語大辞典』には載っていない。
しかし,どうも,本来は,
面の皮が厚い,
というか,
馬の面にしょんべん,
といった悪意を含んだ感じだったようなのだ。それが,類語には,「緊迫感がなくゆったりしているさま」の意として,
気長,悠長,呑気,ゆっくり,のんびり,おっとり,ゆったり,悠然,悠々,
と,ひどくのどかな意味になっている。むしろ,
のうのう,
あるいは,
のーのー,
が近いのかもしれない。『広辞苑』には,
心配や気づかいをすることなく,暢気な気分でいるさま,
とある。語源がよくわからないが,「のうのう」は,
喃喃
と当てる。「喃」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/424913724.html
で触れたように,語尾に,
~だのう,
と付ける。しかし,
「喃」の字の,「南」は,納(中に入れる)と同系の言葉で,中に籠るという意をもつ。で,「口+南」は,
口の中に籠ってはっきり聞き取れない,
つまり,
くちごもりつつしゃべる
という意味となり,「喃喃(なんなん)」とつづけて,
もたもたといつまでもしゃべる,
という意味になる。「のう」と訓ませるのは,わが国独特で,
喃(のう),
で,人に呼び掛ける意味に使う。「喃々(のうのう)」で,
もしもし,
となる。
その他,「喃」で始まる言葉は,
喃語
喃喃(なんなん)
がある。
喃語
は,
乳児のまだ言葉にならない発声,
という意味だが,その他に,
くどくどと話すこと。
男女がむつまじくささやき合うように話すこと。むつごと。
喃喃
も,「なんなん」と訓ませると,
口数多くしゃべり続けるさま,
という本義になる。こう考えると,
「のうのう」
は,太い奴に,傍からは見えるが,その実,意味からは,可愛げが見える。しかし,現代の類語は,
おめおめ,
ぬくぬく,
といった,ある種非難をこめた言い方になっている。主観的には,悠々,だが,その態度そのものが咎められる,という状態である。
逆に,本来,面の皮の厚さを含意していたはずの,
のほほん,
が,どちらかというと,
ものごとに頓着しない,
とか,
おおらかな,
という意味に変っているのが面白い。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
山口仲美編『擬音語・擬態語辞典』(講談社学術文庫)
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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