も……か
験(しるし)なき恋をもするか夕(ゆふ)されば人の手まきて寝(ぬ)らむ子ゆゑに(万葉集)
の、
も……か、
は、
疑問的詠嘆、
とし、
私は、何とまあ甲斐もない恋をすることか、
と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。別に、
をもするかは、独りごとのような嘆きの反語的表現、
として、
「こんな恋をしてしまうのか、いや、してしまっているのだなあ…」という自責と諦念が混じる、
との解釈もある(Copilot)。
相思はずあるらむ君をあやしくも嘆きわたるか人の問ふまで(万葉集)
では、
あやしくも、
を
奇妙に、
我ながら不思議に、
とし、
も……か、
を、
詠嘆、
として、
何とまあ我ながら不思議と嘆きつづけています(人がどうしたのかと尋ねるほどに)、
と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。
も……か、
については、取り上げるものが少ないが、
山縣(やまがた)に蒔(ま)ける菘菜(あをな)も吉備人(きびひと)と共にし摘めば楽しく母(モ)ある迦(カ)(古事記)、
と、
係助詞「も」と終助詞「か」とが呼応したもの、
で、
「も」「か」ともに詠嘆を表わす、
とある(精選版日本国語大辞典)。
か、
は、
疑問詞を承ける係助詞のひとつ、
で(岩波古語辞典)、種々の語に付く(デジタル大辞泉)が、
表現者自身の判断を下すことが不能であること、疑問であることを表明するのが原義、これは「や」が、話し手の見込み、あるいは予断を表明して、相手に問うのとは根本的に相違している。「か」は本来終助詞として使われるのが基本と思われるが、文節の切れ目にならば用いることができる(岩波古語辞典)、
とあり、使い方として、
庭(には)つ鳥鶏(かけ)は鳴く心痛(うれた)くも鳴くなる鳥加(カ)この鳥も打ち止(や)めこせね(古事記)、
君がため折れるかざしは紫の雲に劣らぬ花のけしきか(源氏物語)、
と、文末において、
体言または活用語の連体形を受け、詠嘆、
を表わし、
……なあ、
の意で、古代では、文中の「も」と相応じて、
…も…か、
の形をとることが多い(精選版日本国語大辞典・学研全訳古語辞典)とある。現代でも、
だれかと思ったら、君だったのか、
なかなかやるじゃないか、
と、
驚きや感動の気持ちを表す、
使い方をするが、古語と異なり、
も…か、
の形をとることは少ない(デジタル大辞泉)。ちなみに、
伊勢の海の海人(あま)の島津(しまつ)が鰒(あはび)玉取りて後(のち)毛可(モカ)恋の繁(しげ)けむ(万葉集)、
と、係助詞「も」「か」の重なった、
もか、
も、「も」は詠嘆、「か」は疑問を表わし、
…も…であろうか、
と、
(玉を手に入れてからも)なお慕わしい思いを募らせるのであろうか、
と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。なお、
かも、
については触れた。
参考文献;
伊藤博訳注『新版万葉集』(全四巻合本版)(角川ソフィア文庫Kindle版)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
ホームページ;http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典;http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評;http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95
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