なまし

秋萩の上(うへ)に置きたる白露の消(け)かもしなまし恋ひつつあらずは(万葉集) 秋の穂をしのに押しなべ置く霜の消(け)かもしなまし恋ひつつあらずは(仝上) の、 消(け)かもしなまし、 の、 かも、 は、 疑問、 し、 は、 サ変動詞「す」の連用形、 で、 消え失せてでもしてしまう方がましなのではないか、 と訳す(伊藤…

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手本(たもと)

色づかふ秋の露霜(つゆしも)な降りそね妹が手本(たもと)をまかぬ今夜(こよひ)は(万葉集) の、 色づかふ、 は、 色づく+ふ、 で、 色づくの継続態、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 ふ、 は、 まもらふ、 で触れたように、 フ、 は、動詞の未然形の下に付いて、 は|ひ|ふ|ふ|へ|(へ)、 の…

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したふ

秋山のしたひが下(した)に鳴く鳥の声だに聞かば何か嘆かむ(万葉集) の、 したひ、 は、 紅く色づく意の動詞「したふ」の名詞形、 とあり(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 声だに、 は、 あの方の声だけでも、 の意で、 (もみぢの陰で鳴く鳥の声)その鳥の声ではないが、せめてあの方の声だけでも聞くことができたら、 と訳す(仝上)。 …

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覆(おほ)ひ羽(ば)

天(あま)飛ぶや雁(かり)の翼(つばさ)の覆(おほ)ひ羽(ば)のいづくに漏りてか霜の降りけむ(万葉集) の、 覆(おほ)ひ羽(ば)、 は、 空を覆うように両翼をひろげたさま、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 多くの雁などが翼を広げておおう、その翼(広辞苑)、 覆うように広げられている羽。雁が群れをなして翼を広げるさまなどにいう(岩波古語辞典)、 …

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桂楫(かつらかぢ)

天(あま)の海に月の舟浮(う)け桂楫(かつらかぢ)懸(か)けて漕ぐ見ゆ月人壮士(つきひとをとこ)(万葉集) の、 桂楫、 は、 桂でつくった楫、 の意で、 月に桂の木があるという伝説による、 とする(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 月人壮士(つきひとをとこ)、 は、 月読、 で触れたように、 天橋(あまはし)も長くもがも高…

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異(け)に

里ゆ異(け)に霜は置くらし高松の野山づかさの色づくみれば(万葉集) の、 里ゆ異(け)に、 は、 里よりも異なった状態で、 の意で 人里とは違って、 と訳し、 野山づかさ、 は、 野山の小高い所、 の意とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 日に異(け)に、 で触れたように、 日(ひ)に異(け)に の …

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祭りの跡

H・ルフェーヴル『パリ・コミューン』、リサガレー『パリ・コミューン』、大佛次郎『バリ燃ゆ』を読む。 確か、マルクスは、『ルイ・ボナパルトのブリュメールの十八日』で、 ヘーゲルはどこかでのべている。すべての世界史的な大事件や大人物はいわば二度あらわれるものだ、と。一度目は悲劇として、二度目は茶番として、と、かれは、つけくわえるのをわすれたのだ。 と述べてい…

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九月(ながつき)の白露(しらつゆ)負ひてあしひきの山のもみたむ見まくしもよし(万葉集) の、 山のもみたむ、 は、 山の美しく色づくさまを、 と訳し(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 見まくしもよし、 の、 見まく、 は、 見む、 のク語法で、 そのさまをもうすぐ見られるのは、まことに心楽しい気がする、 と訳す(仝上)…

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すくなくも

風吹けば黄葉(もみぢ)散りつつすくなくも吾(あが)の松原清くあらなくに(万葉集) の、 すくなくも、 は、多く、「なくに」と呼応し、 ちっとやそっとの……ではない、 の意となり、ここでは、 すくなくも吾(あが)の松原清くあらなくに、 は、 この吾(あが)の松原はちっとやそっとの清らかさではない、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 …

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あかとき

このごろの暁(あかとき)露に我(わ)がやどの萩の下葉(したば)は色づきにけり(万葉集) の、 暁(あかとき)露、 は、 明け方の露、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 あかつき、 で触れたように、上代は、 あかつき、 は、 あかとき、 で、中古以後、 あかつき、 となる。もともとは、古代の夜の時間を、 ユ…

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朝明(あさけ)

雁が音の寒き朝明(あさけ)の露ならし春日の山をもみたすものは(万葉集) 今朝(けさ)の朝明(あさけ)雁(かり)が音(ね)聞きつ春日山(かすがやま)もみちにけらし我が心痛し(穂積皇子) の、 朝明、 は、 あさあけ、 の約、 夜明け、 明け方、 の意(広辞苑)、多く、 歌語として用いられる、 とある(精選版日本国語大辞典)。前者の、 …

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苫手(とまで)

秋田刈る苫手(とまで)動くなり白露し置く穂田(ほだ)なしと告げに來(き)ぬらし(万葉集) の、 苫手動くなり、 は、 仮小屋の屋根の葺き草がかさかさと音を立てている、 意とし、 苫が揺れている、 と訳し、 穂田(ほだ)なしと告げに來(き)ぬらし は、露を擬人化し、 我身を置くべき穂田がないと告げに来たらしい、 と訳す(伊藤博訳…

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片聞く

秋の野の尾花が末(うれ)に鳴くもずの声聞きけむか片聞(かたき)け我妹(わぎも)(萬葉集) の、 片聞け、 は、 ひたすらに聞け、 の意で、 よくよく聞きなさい、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 片聞く、 は、 (二人そろって聞くべきであるのに)一人で聞く(精選版日本国語大辞典)、 二人で共に聞かず、一人で聞く(岩波古語辞典)…

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田子の浦ゆうち出(い)でてみれば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける(山部赤亼) の、 ゆ、 は、 通過地を示す、 とあり(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 田子の浦をうち出てみると、 と訳し(仝上)、 妹が手を取石(とろし)の池の波の間(ゆ)鳥が音(ね)異(け)に鳴く秋過ぎぬらし(万葉集) の、 ゆ、 は、 池に立つ波の間から…

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夕かたまけて

草枕旅に物思(も)ひ我(わ)が聞けば夕かたまけて鳴くかわづかも(万葉集) の、 夕かたまけて、 は、 夕方が近づいたとばかりに、 と訳す(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 夕かたまけて、 は、 夕片設けて、 とあて、 夕がたになる、 日暮れに近づく、 意である(精選版日本国語大辞典・デジタル大辞泉)。 片まく、 は、…

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こほろぎ

秋風の寒く吹くなへ我(わ)がやどの浅茅(あさぢ)が本(もと)のにこほろぎ鳴くも(万葉集) の、 詞書(和歌や俳句の前書きで、万葉集のように、漢文で書かれた場合、題詞(だいし)という)に、 蟋(こほろぎ)を詠む、 とあり、その、 蟋(こほろぎ)、 は、 今のこおろぎか。秋鳴く虫の総称ともいう、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 なへ、 …

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かしこし

山辺にはさつ男のねらひ畏(かしこ)けど鹿鳴くなり妻が目を欲(ほ)り(万葉集) の、 さつ男、 は、 狩人、 さつ、 は、 幸、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 幸、 については、 さつや、 で触れた。 畏(かしこ)けど、 は、 恐ろしいに違いないが、 とし、 妻が目を欲(ほ)り、 …

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かも

つとに行く雁の鳴く音は我(あ)がごとく物思(ものも)へれかも声の悲しき(万葉集) の、 つとに行く、 は、 朝早く飛び渡る、 とし(伊藤博訳注『新版万葉集』)、 物思(ものも)へれかも、 は、 物思うからか、 と訳す(仝上)。 つとに、 は、 夙に、 とあて、 早くから、 ずっと以前から、 の意もある…

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おしてる

おしてる難波堀江(なにはほりえ)の葦辺には雁寝たるかも霜の降らくに(万葉集) の、 おしてる、 は、 難波の枕詞、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 おしてる、 は、 押し照る、 とあて、 ら/り/る/る/れ/れ、 の、自動詞ラ行四段活用、 で、 押しは接頭語(学研全訳古語辞典)、 「おす」は、日や月などの光…

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はだれ霜

天雲(あまくも)の外(よそ)に雁が音(ね)聞きしよりはだれ霜降り寒しこの夜は(万葉集) の、 はだれ霜、 は、 うっすらと降り置いた霜、 とある(伊藤博訳注『新版万葉集』)。 (霜が降りた朝 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9C%9Cより) はだれ、 は、 ほどろ、 でふれたように、 はだら…

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